2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on stress dynamics and its diversity in plant cells based on molecular imaging of membrane lipids
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20K06731
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
大田 修平 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (20455926)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞形態 / 多様性 / ストレス / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
生物はさまざまな環境ストレス対して防御機構を備えている。それらのストレスに対する機構は生物種や環境因子によって多様である。真核生物にはストレス応答機構としてオートファジー(ATG)が知られている。ATG機構は細胞内のタンパク質のリサイクル機構として知られ、出芽酵母や動物細胞を利用した研究が多数報告されている。一方で植物細胞にもATG機構が確認されているものの、動物や酵母細胞を利用した研究に比べて遅れている。本研究ではATG過程で見られる微細構造や膜脂質組成の変化をフローサイトメトリーやイメージングにより明らかにし、“広義の植物”に関するストレス応答の動態とその多様性を理解することを目的としている。 本研究では、真核生物の多様な系統群に属する微細藻類を対象に、それぞれATG機構に着目したストレス応答動態を解明し、進化的な議論にまで落とし込む。2020年度は国立環境研究所微生物保存施設(MCC-NIES)に維持されている複数の藻類株の分譲をうけ、実験に使用する株の選定を行った。現在は、緑藻 Chlamydomonas reinhardtii NIES-2235 や生態毒性試験に用いられている Raphidocelis subcapitata NIES-35 を対象として実験を実施した。さらに、イメージングの際に微細蛍光シグナルとクロロフィルの自家蛍光のクロストークを防止する目的で、クロロフィルを欠く緑藻である Chlamydomonad sp. NIES-4405 を利用した間接蛍光抗体法の条件検討を進めている。また、本年度は緑藻 C. reinhardtii に対するストレス付与実験を行い、ATG機構のセカンドメッセンジャー分子であるホスファチジルイノシトール3リン酸の局在や動態をフローサイトメトリーや蛍光顕微鏡で解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は計画段階で想定していた実験や条件検討を実施することができ、概ね順調であったといえる。特に、細胞内のオートファジー関連分子の可視化に関しては先行研究のプロトコールにもとづいた実験を行うことで、これによりデータを効率よく収集できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ストレスによる藻類細胞の環境応答の多様性を調べることを最終目標としている。現在は緑藻を中心に実験を行っており、今後は進化的に異なる系統群に属する種、例えば珪藻類についても実験を進める予定である。また、本研究では環境ストレス源として重金属に着目しており、形態・微細構造へ及ぼす影響をついても調べる予定である。今後の研究では、電子顕微鏡観察と並行して、超解像顕微鏡によるATG機構に関連する細胞内分子動態を明らかにすることに注力する。また、重金属がストレス源として及ぼす影響をトランスクリプトームレベルで明らかにすることも研究計画に組み込む予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は国際会議の中止および国内学会のオンラインによる参加のため、出張旅費に関する経費が削減された。これらは成果発表に関わる経費であることから、学会参加費や論文出版の投稿料等の費用として使用する。
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