2020 Fiscal Year Research-status Report
ラボとフィールドの往還研究によるクラゲの光受容・卵成熟誘起機構の解明
Project/Area Number |
20K06736
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
出口 竜作 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (90302257)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 神経ペプチド / 放卵 / 放精 / 照度変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で用いるエダアシクラゲには、明タイプ(明刺激により配偶子を放出)と暗タイプ(暗刺激により配偶子を放出)が存在する。両タイプのそれぞれ雌個体から卵巣のみを単離し、トランスクリプトーム解析を行って遺伝子産物を比較した結果、卵成熟誘起ホルモンのプレプロホルモンの発現が確認された。両者のプレプロホルモンは、アルギニン-プロリン-アルギニン-プロリン、C末端のアミド化に必須なグリシン、その下流の切断部位を共通して含んでいたものの、上流(N末端側)の配列は大きく異なっていた。明タイプと暗タイプのどちらの卵母細胞に対しても、4アミノ酸(RPRPamide)は低濃度で卵成熟を誘起するのに対し、N末端側にアミノ酸を連結すると効果が格段に低下することからも、N末端側の配列は最終的には切断され、同じ4アミノ酸の卵成熟誘起ホルモンが生じている可能性が高いと考えられた。また、実際のフィールド(宮城県宮城郡七ヶ浜町菖蒲田漁港)での調査では、海水中の照度を連続測定しながら、一定間隔ごとに暗タイプのエダアシクラゲを採集し、得られた個体が放卵・放精の途中であるか、その前後であるかを調べた。その結果、日暮れ時刻がほぼ同じ日においても、照度が徐々に低下していった日に比べ、照度低下の途中で雲の切れ間から太陽光が差して照度が一旦上昇するような日には、より低い照度になってからしか放卵・放精が起こらないことがわかった。「光中断」の結果、卵成熟誘起ホルモン放出に遅延が生じた可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスクリプトーム解析やフィールドでのデータ取得などは実現できているが、両者の光受容機構の違いを規定する分子に関する情報を得ることができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
卵巣のトランスクリプトーム解析により得られた情報を活用し、オプシンやクリプトクロムなどの光受容に関与する物質の卵巣での発現状況を調べる。その際、明タイプと暗タイプ間での比較だけでなく、雌個体と雄個体間での比較も行う。また、フィールドを模した照度変化を与えた際の卵成熟誘起ホルモンの放出状況を、抗PRPamide抗体によって調べる。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、旅費や謝金を支出することができなかった。2021年度には、当初の予定に加え、県外でのフィールド調査や学会発表、研究室の学生による研究補助などにも助成金を使用していきたいと考えている。
|