2021 Fiscal Year Research-status Report
L-グルタミン酸からはじまる哺乳類D-アミノ酸ワールド
Project/Area Number |
20K06740
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宇田 幸司 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (10448392)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | D-アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸には,L-アミノ酸とD-アミノ酸の二種類の異性体が存在するが,通常はL-アミノ酸のみが生体内で利用されている。しかし,かつては生体内には存在しないとされていたD-アミノ酸が,分析技術の発達に伴い,多くの動物から検出されている。哺乳類からも,D-セリン,D-アスパラギン酸,D-グルタミン酸などの10種類以上のD-アミノ酸が検出され, D-アスパラギン酸はメラトニンやプロラクチンの分泌調節を行うこと,D-セリンは統合失調症やアルツハイマーに関与すること,D-グルタミン酸が心不全状態に関与することが知られている。また,哺乳類のマウス,ラット,ヒトからはD-セリンを合成可能なセリンラセマーゼ遺伝子が単離されている。本研究では,D-セリンを合成するセリンラセマーゼ以外のアミノ酸ラセマーゼが哺乳類に存在するかどうか,またセリンラセマーゼの哺乳類及び脊椎動物における分布を確認する事を目的として行った。 本年度は,哺乳類のウマ,ヒツジ,マナティー,コアラ,カモノハシ,鳥類のニワトリ,爬虫類のニシキガメ,アオウミガメ,両生類のアフリカツメガエル,サンショウウオ,魚類のゼブラフィッシュ,ジンベエザメ,シーラカンスに存在するセリンラセマーゼホモログ遺伝子の人工遺伝子合成を行った。合成されたセリンラセマーゼホモログ遺伝子は,pET30ベクターまたはpMAL-c2Xベクターにクローニングした後,HisタグまたはMBP融合タンパク質として大腸菌発現系で発現,精製し,アミノ酸ラセマーゼ活性の確認を行った。その結果,哺乳類のセリンラセマーゼホモログは一部を除いて,D-セリンの合成活性を持つが,哺乳類以外の脊椎動物ではセリンラセマーゼホモログにはD-セリン合成活性が無いことが明らかとなった,
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は哺乳類および脊椎動物におけるセリンラセマーゼの分布の確認とその機能解析を目的として行った。当初の予定通り,哺乳類および脊椎動物の各系統からセリンラセマーゼホモログが単離され,その機能を明らかにすることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,セリンラセマーゼに限らず,D-アミノ酸代謝に関与する酵素遺伝子を哺乳類から単離することを目指す。単離方法としては,グルタミン酸要求性大腸菌を用いたスクリーニング方と,相同性検索と人工遺伝子合成による方法の二種類を予定している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,参加した学会がオンライン開催となったため,学会参加旅費として予定していた予算が使用されなかった。 次年度に参加する学会の旅費として,また実験で使用する消耗品費用として利用する。
|
Research Products
(1 results)