2023 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of general strategies governing wing and body movements in insect flight
Project/Area Number |
20K06743
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
安藤 規泰 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (70436591)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 昆虫 / 飛行 / 腹部運動 / 筋電位 / 運動解析 / 高速度撮影 / 羽ばたき運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はスズメガの腹部運動を担う腹部第一節の背縦走筋(Ab1DLM)の筋電位を計測し,腹部運動制御の神経筋メカニズム,および羽ばたきを担う胸部の背縦走筋(ThDLM1)との相関解析からリズム生成の共通原理について考察した。Ab1DLMはThDLM1と異なり複数スパイクからなるバースト活動が特徴で,スパイク数と腹部の角速度に相関がみられたことから,腹部の運動とともに腹部角度の維持を行っていることが示された。その一方で,羽ばたき周期においてAb1DLMが活動しない位相が見られたことから,Ab1DLMの活動サイクルは羽ばたき運動のリズム生成機構とカップリングしていることが示唆された。これらの結果は,研究計画において掲げた仮説である羽ばたき運動と腹部運動の共通原理を支持するものであり,共通の運動パターンが胸部と腹部それぞれの末梢における運動ニューロンの活動閾値や筋骨格系の力学的特性の違いを通して,羽ばたき運動と腹部運動という異なる運動を生み出していると考えられる。 研究全体を総括すると,研究前半に実施した腹部運動の機能解析では, AbDLM1を切断した個体で飛行解析を行い,AbDLM1が上下の腹部運動の主要な筋であること,そして切断による腹部運動の抑制によりピッチ角が不安定化することを示した。これは腹部運動の機能が,従来示唆されていた方向制御だけでなく,姿勢の安定化に深くかかわっていることを初めて示した成果であった。前述の後半の成果と総合すると,本研究課題により昆虫飛行における腹部運動の機能と制御を明らかにできたとともに,シンプルな運動パターンから異なる運動を生み出す結果から,昆虫の進化におけるロコモーション(歩行,飛行,遊泳など)の多様化のメカニズムの解明につながる成果を得ることができたと言える。
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