2021 Fiscal Year Research-status Report
冬眠哺乳動物は,何故,冬眠するときに体温を下げることができるのか?
Project/Area Number |
20K06746
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高松 信彦 北里大学, 理学部, 教授 (40206876)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冬眠 / HSF1 / Per2 / 体温変動 / 中途覚醒 / AMPK |
Outline of Annual Research Achievements |
冬眠哺乳動物シマリスは,夏季の活動期には約37℃の体温を保って生命活動を行なっているが,冬季の冬眠期には,恒暗・低温の巣穴で,5~7日間の冬眠(約5℃の持続的な低体温状態)と約20時間の中途覚醒(体温が37℃に回復,摂食を行う)を繰り返す。2020年度のシマリス肝臓における時計遺伝子Per2の発現解析から,冬眠期の冬眠時には末梢時計は停止しているが,中途覚醒時には体温上昇によって活性化されたHSF1によってPer2遺伝子の転写が活性化されて,概日リズムはリセットされると考えられた。 中途覚醒時に概日リズムがリセットされれば覚醒-睡眠サイクルが回復し,ジリスで報告されているように,睡眠状態から冬眠に入っている可能性が考えられる。そこで,2021年度は冬眠するために代謝を抑制して,体温を低下させる機構について調べるため,肝臓におけるエネルギーセンサーAMPKの活性制御について解析した。ウエスタン解析の結果,AMPKの触媒サブユニットのAMPKαの総量は一年を通じて大きな変動は見られなかった。AMPKαの活性化の指標である172番目のセリンのリン酸化は活動期の方が冬眠期よりも若干亢進していたが,活動期では一日を通じてリン酸化レベルにあまり大きな変動がないのに対して,冬眠期には冬眠時から覚醒して体温が上昇する時にリン酸化レベルが増加するが,体温が35℃以上になると著しく減少していた。AMPKによってリン酸化されて活性化される転写因子Foxo1の標的遺伝子Gadd45aについても解析した。HepG2細胞を用いた解析から,Foxo1によるGadd45a遺伝子の転写活性化がAMPKによって促進されることが観察された。そこで,シマリス肝臓におけるGadd45a mRNAのRT-qPCR解析を行った結果,Gadd45a mRNA量も冬眠時から覚醒して体温が上昇する時に増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要な課題である冬眠における末梢時計の発現とエネルギー代謝の制御についてより詳細に解析するために,中途覚醒時の冬眠から覚醒して体温が上昇中の個体及び冬眠にはいる過程の体温が低下中の個体のサンプル数を増やす必要があり,現在,体温測定用のテレメーターと赤外線カメラを用いたアクティビティ・センサーでシマリスを観察しながらサンプリングを行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
冬眠するために体温を低下させる機構について解明していくため,エネルギー代謝の主要組織である肝臓のエネルギーセンサーであるAMPKの活性制御についてさらに解析を進める。活動期の睡眠-覚醒サイクル,冬眠期の冬眠-中途覚醒サイクルにおいてAMPKの活性がどのように制御されているかを明らかにするため,AMPKの細胞内局在・活性の変動を,細胞分画とウエスタン解析により解析する。一方,AMPKはHSF1と相互に拮抗的に作用し合うことが報告されており,シマリス肝臓ではHSF1は主に核に存在するが,冬眠時には細胞質に局在する。HSF1の細胞内局在の違いがAMPKの活性制御に与える影響について解析するため,HSF1抗体を用いて免疫沈降を行なったが,AMPKとの結合を検出できなかったので,冬眠時に細胞質に局在するHSF1に結合しているタンパク質のプロテオーム解析を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬が残金では購入できなかったため繰り越した。
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Research Products
(3 results)