2022 Fiscal Year Research-status Report
体温と代謝をつなぐ体温センサーTRPM2機能制御機構の解明
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20K06748
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
加塩 麻紀子 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特任准教授 (20631394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPM2 / 体温 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Transient receptor potential melastatin 2(TRPM2)チャネルは、体温域の温度により活性化する非選択性陽イオンチャネルであるが、その発現パターンは脳、膵臓、免疫細胞等の一定の体温に保たれた深部組織であることから、研究代表者はTRPM2が体温センサーとして機能することで、種々の生理機能調節に働く可能性に注目し、研究を推進している。研究代表者は、TRPM2の活性化閾値が生理的環境下で変化することで体温下TRPM2活性が調節される分子メカニズムとして、以前にはレドックスシグナルによるTRPM2のメチオニン酸化の役割を報告したが、本研究では新たにタンパクリン酸化酵素(PKC)活性によるTRPM2リン酸化がTRPM2活性化温度閾値を上昇させる新知見を見出し、その分子メカニズムとしてTRPM2の細胞内領域に存在するCa2+イオン結合部位におけるCa2+の作用に対して、TRPM2リン酸化が拮抗的に働くことで閾値調節が可能となっていることを明らかにした。さらにはリン酸化部位として、上記Ca2+イオン結合部位の近傍に位置するアミノ酸残基(Thr738、マウスTRPM2)の同定にも成功した。本研究成果は、温度感受性TRPチャネルの活性化温度閾値が如何にして決定されるのかを解明するうえで革新的な発見と考えられる。さらには、温度感受性TRPチャネルが温度により活性化するメカニズムを知る糸口となる成果と期待する。以上の研究成果は、研究代表者が筆頭・責任著者となり論文報告を完了した(J Physiol 600:4287-4302,2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究を遂行し、論文発表を完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、活性化温度閾値調節の分子メカニズム解明を重点的に研究を遂行した。今後は得られた成果を発展させることで、生体におけるTRPM2の未知なる生理機能を明らかにする研究を遂行予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大による活動制限を含む研究推進遅延のため。今年度は計画通りの研究を実施したものの、すべての予算執行には至らなかった。しかしながら、来年度はin vivo実験を含む発展的研究展開を予定している。したがって、当初計画していた3年より1か年延長した4年での予算執行となるが、研究全体としての適正な予算使用は可能である。
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