2021 Fiscal Year Research-status Report
核膜孔複合体のコンポーネント間相互作用とその不和合による生殖的隔離
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20K06755
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
澤村 京一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90247205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 喜博 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90201938)
平井 和之 杏林大学, 医学部, 講師 (70597335)
石川 裕之 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (00398819)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 核膜孔複合体 / 種間雑種 / 遺伝的不和合 / 生殖的隔離 |
Outline of Annual Research Achievements |
核膜孔複合体を構成する約30種類のヌクレオポリンのうちNup107-160サブ複合体はELYSタンパク質によって核膜へとリクルートされる。これまでわれわれはキイロショウジョウバエにおけるElys遺伝子の母性効果について研究してきた。野生型雌が産んだ受精卵では第1回有糸分裂は精子と卵に由来する2つの核が並列した2つの紡錘体を形成しその後融合する。一方、Elys機能欠損変異体が産んだ卵(①)ではこれら2つの紡錘体が並列前に融合してしまった(融合型の分裂異常)。また、Elys高発現個体が産んだ卵(②)では逆に2つの紡錘体が解離したままになっていた(解離型の分裂異常)。そのため①②ともに、受精卵は第1回有糸分裂の中期に致死となった。 初年度は、近縁種オナジショウジョウバエのElys遺伝子をGal4/UASシステムによって強制発現させることで、オナジショウジョウバエのElys遺伝子がキイロショウジョウバエのElys機能欠損による母性効果致死を救済できることを示した。本年度は、複数のGal4系統を用いキイロショウジョウバエおよびオナジショウジョウバエのElys遺伝子発現量を変化させることで、第1回有糸分裂への影響(融合型・解離型、いずれのタイプの異常を生じるか)を調査した。その結果、オナジショウジョウバエのElys遺伝子では比較的少ない発現量であってもその影響が大きく、第1回有糸分裂では解離型の分裂異常を示しやすいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに初期胚におけるDNAや紡錘体、中心体の可視化は問題なく実施できたが、特に重要なのはELYSタンパク質の細胞内での分布である。今年度、新規作製したELYS抗体が組織染色に使用できることを確認し、ELYSタンパク質の細胞内局在を明らかにすることができた。また、内在性のElys遺伝子と強制発現させたElys遺伝子の区別、キイロショウジョウバエのElys遺伝子とオナジショウジョウバエのElys遺伝子の区別が可能になり、これらの発現量を定量PCRによって比較することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに複数のGal4系統を用いて、キイロショウジョウバエあるいはオナジショウジョウバエのElys遺伝子を強制発現させたさまざまな遺伝子型の雌が産んだ受精卵を収集・固定してきた。これらを引き続き抗体染色して、共焦点レーザー顕微鏡で観察することによって、最終年度には以下の点を明らかにする。(1)前述の①に見られる融合型の分裂異常や②に見られる解離型の分裂異常において、ELYSタンパク質の分布にどのような相違が見られるか検討する。(2)キイロショウジョウバエとオナジショウジョウバエのELYSタンパク質に機能の違い(同じ発現量でもその影響が大きく異なること)が明らかになったため、種間での分布の相違についても検討する。これらのデータをまとめて、本年度中に論文を執筆し、学術雑誌に投稿する。 また、今後の研究展開を見据えて、最終年度には以下のような研究を計画している。(1)各種ヌクレオポリン(ELYS/Nup96/Nup160/Nup37など)のタンパク質間相互作用を明かにするため、ショウジョウバエ培養細胞株(S2)を用いた共免疫沈降(Co-IP)の実験法を確立する。(2)キイロショウジョウバエのElysあるいはNupを単独でオナジショウジョウバエ由来の相同遺伝子に置換すると雑種致死になるが、これらが組み合わされた状態で置換すると不和合が打ち消されて致死にならないことが予想される。そのような可能性を検討するために、オナジショウジョウバエのElysの強制発現系とオナジショウジョウバエのNup96/Nup160のイントログレッションを併せ持った個体を作出すべく、交配を続行する。
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Causes of Carryover |
学会発表等が軒並みリモート開催になったため、予定していた旅費を使用しなかったことが主たる要因である。ショウジョウバエ系統維持に必要な人件費(24万円)、学会発表のための旅費(26万円)、論文投稿費(25万円)を計上しており、それ以外は消耗品費として使用の予定である。
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Research Products
(3 results)