2020 Fiscal Year Research-status Report
Genetic analysis of BLM-TOP3alpha-RMI1-RMI2 complex
Project/Area Number |
20K06760
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿部 拓也 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50779999)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | DT40 / BLM / RMI1 / RMI2 / TOP3a |
Outline of Annual Research Achievements |
BTR複合体は生物に共通の機構である「相同組換え経路」において、絡まったDNA鎖を解き、不必要なDNAの組換えを抑制する因子である。相同組換え経路の不良化は多くの癌と密接に関わっており、BTR複合体の各因子の変異はブルーム症候群など高発癌性の遺伝病を引き起こすことが知られている。そのため、BTR複合体の機能を明らかにすることは生物学、及び医学の両面において重要である。報告者はこれまでニワトリDT40細胞を用いてゲノム安定性に関わる様々な遺伝子の欠損細胞を作製してきた。その技術を生かし、BTR複合体構成因子の多重遺伝子欠損細胞を作製し、遺伝学的解析を行うことでBTR複合体構成因子間の機能的関係性に迫ることを目指した。 報告者は遺伝子条件欠損細胞株作製法の一つである、「オーキシンデグロンシステム」を用いることにより、世界に先駆けてRMI1条件欠損細胞株の作製に成功していた。本年度は本細胞株を起点としてRMI1/RMI2二重条件欠損細胞株の作製に成功し、この2者の同時欠損によって細胞が合成致死となることを明らかにした。酵母のRMI1/RMI2ホモログであるRMI1欠損株の表現型はBLMホモログであるSGS1を欠損させることにより抑制されることから、今後動物細胞でもこの関係性が保たれているかどうかを確認する。具体的にはRMI1/RMI2二重条件欠損細胞株においてさらにBLMを欠損させ、三重欠損とすることでその致死性が抑制されるかどうかを検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の生存に必須の遺伝子や合成致死となるような遺伝子の機能を解析するにあたっては、条件遺伝子欠損細胞株を作製する必要がある。報告者はオーキシンデグロンシステム、Flip-Inシステム、CRISPR-Cas9システムを併用することで様々な条件遺伝子欠損細胞株を作製してきた。 本年度はこの技術を用い、RMI1/RMI2条件二重欠損細胞株の作製に成功し、この二重欠損により細胞が合成致死となることを見出した。また二重欠損細胞が死にゆく際には、G2/M期への蓄積、細胞分裂の異常、DNA二本鎖切断・染色体断裂の増加などが観察され、これらの異常が合成致死の原因となっていると考えられた。これらの表現型はTOP3a欠損株の表現型と酷似しており、RMI1/RMI2が同時に欠損することとTOP3aが欠損することがほぼ同義であることが示された。一方、RMI1/RMI2二重欠損細胞株の致死性は相同組換え因子の一つであるXRCC3を欠損させることにより部分的に抑制された。このことからRMI1/RMI2はXRCC3を含む相同組換え経路の下流で機能することが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後RMI1/RMI2二重欠損細胞の致死性がBLMを欠損させることで抑制されるかどうかを検討する。これが抑制されなかった場合、その原因としてはいくつかの理由が考えられる。一つ目が動物細胞ではBLMの機能の一部はRecQL1とRecQL5によってバックアップされていると考えられているためRecQL1やRecQL5のいずれかがBLMに代わってRMI1/RMI2/TOP3aによって解消されるべきDNA組換え中間体を形成させている可能性である。そこでBLMの欠損によって致死性が抑制されなかった場合、RMI1/RMI2/BLM三重条件欠損細胞株に対してさらにRecQL1やRecQL5を欠損させて致死性が抑制されるかどうかを検討する。二つ目はRMI1/RMI2が組換え中間体の解消以外にも細胞の生存に必須な機能を持っている可能性である。この場合RMI1/RMI2/BLM三重欠損によって細胞が死にゆく際に、細胞および染色体にどのようなことが起きているのかを観察することでそれを明らかにできると考えられる。
|