2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06762
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (80425686)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SDR / multi-replicon / RecA / PriA / transcription / replication origin / R-loop |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体複製において、真核細胞では多数の複製起点が活性化するmulti-replicon様式を採用しているのに対して、バクテリアはsingle-replicon様式である。しかしながら、大腸菌における安定DNA複製(SDR)は、multi-replicon様式であることから、これが真核細胞複製機構の始祖である想定し、検証する。cSDRはRNaseHI欠損株で恒常的に活性化することから、転写とR-loopの形成が重要であるが、固有の複製起点の位置とそのメカニズムは明らかになっていない。必須の因子RecAとPriAタンパク質の結合ゲノム領域は、DNA合成開始位置と一致することから、複製起点候補として、oriT1をter領域に同定した。oriT1は機能未知の遺伝子ycjDと、典型的なグアニン四重鎖(G4)形成配列を含むことから、SDR開始が、転写とグアニン四重鎖に制御される新規モデルを想定している。そのメカニズムを明らかにするために、in vitro複製系を確立する必要がある。今回は、G4の関与をより明確に判定できる、最小複製単位(minimum replicon)を持つプラスミドを構築した。転写を制御するため、T7プロモーターをG4配列上流に挿入したカセットを薬剤耐性遺伝子に繋ぎ、生育のみで複製を評価する系を確立した。このプラスミドは、pSC101 originを持たせてあり、RepA発現株でのみ増幅できる。これを、T7 RNAポリメラーゼ発現株に形質転換し、薬剤入りプレート上で転写誘導性の生育を観察し、転写依存性に複製するプラスミドを確立した。この系ではT7プロモーターのみでも弱いながら複製することが分かったが、terminatorに含まれるGクラスターが複製開始を促進する可能性が強く示唆されたため、G4形成は本最小複製単位の複製開始効率に機能している可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌の安定DNA複製様式(SDR)が、真核細胞のmulti-replicon様式の始祖である可能性を検証するため、転写依存性複製起点の構築を試みた。T7 RNAポリメラーゼ発現株、RepA発現株の確立が必要で、この構築に時間を要した。また、minimum replicon plasmid構築の過程で、複製開始に各因子の方向性が重要であることがわかり、多くのplasmidの構築が、予想外の作業であった。構築されたminimum repliconにより、転写依存性複製開始plasmidの確立に成功したが、G4の関与と具体的なメカニズムを直接示す証拠を得ることを達成しておらず、計画がやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる最適化によりminimum repliconを確立する。この複製単位が、バクテリアのみならず、真核細胞でも複製可能であることを示すため、まず酵母での複製を試みる。酵母で利用可能な薬剤耐性と転写誘導のための配列に変換したプラスミドを構築する。さらに、核内移行因子を繋いだT7 RNA polymeraseを発現する動物細胞内でも複製する系を確立する予定である。その他、RecAの機能を確定する必要があるため、RecA ChIPによるRNAの検出、その時のPriAとの相互作用を解析する。また、YcjDタンパク質がG4特異的結合能を有することを見出したが、これが複製開始にどのように寄与するかが不明なため、各種の生化学解析により検証し、G4に依存する複製開始様式を確立したいと考えている。
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Causes of Carryover |
大腸菌遺伝子改変株の構築に予想外の作業を要したため、実施が遅延し、次年度へ繰り越さざるを得なかった。次年度は、今年度未実施のマイクロアレイ解析を、計画していたNGS解析に合わせて実施する予定で、その費用に充てる。
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