2021 Fiscal Year Research-status Report
真核生物の加速度的進化は巨大ウイルスがもたらした-状況証拠から実態解明へ
Project/Area Number |
20K06772
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
松尾 充啓 摂南大学, 農学部, 講師 (70415298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小保方 潤一 摂南大学, 農学部, 教授 (50185667)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 巨大ウイルス / 細胞内共生進化 / 有殻アメーバ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリア並みの容積とゲノムサイズを持つ巨大ウイルスが細胞内共生進化に関わることが、申請者らによる有殻アメーバのゲノム解析から示唆されている。本研究では、この有殻アメーバに感染する巨大ウイルスのゲノムを解読して、その性状を明らかにすることで、遺伝子転移現象等の細胞内共生進化プロセスにおける巨大DNAウイルスの役割を解明することを目的としている。そこで本研究の当該年度においては、予定していたロングリードシーケンサーを用いた有殻アメーバ(Paulinella micropora MYN1株)のゲノムのリシーケンシングを行い、本培養株に感染する巨大ウイルスについて、精度の高い長鎖の配列データを世界で初めて取得した。そしてその解析により、予想を上回る量の多くのウイルス様配列の検出に成功した。先行研究ですでに得られていた配列データ(ChIP法で濃縮した核ゲノム配列)と異なり、今回得られた総ゲノム配列のデータには、宿主の核ゲノムに組み込まれていないウイルスそのものの配列が多数含まれると考えられる。現在、これらの配列について詳細な解析を進めている。また前年度の実施報告書で述べた、自然環境から巨大ウイルスを検出する解析も試みた。具体的には、近郊の池を調査して、有殻アメーバの生息が確認された池の環境サンプルについて、有殻アメーバへの感染実験とPCR実験を行った。こちらについては、腐食酸等を多く含む泥水のサンプルから微量なウイルスをPCRで安定して検出する上で工夫が必要であることが判明したため、現在、実験系の改良を行っている。また当該年度の解析から、有殻アメーバの培養サンプルに含まれるウイルス量がプロジェクト開始前と比べ、大きく減少していることが示唆された。このウイルス減少問題がウイルスの単離を難しくしていると考えられることから、現在、その対応を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては主要な解析/実験として、①有殻アメーバに感染する巨大ウイルスの単離とそのゲノム解析、②有殻アメーバ核ゲノムに挿入されたウイルス様配列の解析、③有殻アメーバと巨大ウイルスが存在する環境についての解析、の3つを予定していた。②については予定通り進めており、③については、予定よりも先行している。しかし①については、計画当初予期していなかった「有殻アメーバの培養サンプルに含まれるウイルス量の減少」という問題が生じたため、予定より進捗が遅れている。これらを総合的に勘案して、本研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに解読されたウイルス様配列については、結果をまとめた上で成果を学会発表、論文の形で発表する予定である。また本年度に予定していた、巨大ウイルスに関するメタトランスクリプトーム解析については、有殻アメーバの生息が確認された湖沼について実施する。また一般にウイルスの増殖スピードは極めて速いことから、ウイルスが単離されれば、その性状の解析とゲノム解読は比較的短期間で一気に行えると考えられる。そのため最終年度であるが、引き続き有殻アメーバのウイルスの単離・増殖実験を試みる。
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Causes of Carryover |
ウイルスの単離、精製ならびにそのゲノム解析が遅れているため、次年度使用額が発生した。これらの解析は引き続き本年度に実施する予定で、その費用に当該助成金を充てることを考えている。
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