2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the pre-adaptation mechanism underlying the evolution of heart outflow tract
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20K06773
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
守山 裕大 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40646212)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心臓 / 動脈球 / エラスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上に存在する全ての生物は生息する環境に適応するようにその形態・生理機能を変化させてきた。なかでも特徴的なものは、鳥類にみられる羽毛や植物にみられる花弁といった、進化的に新規な形質(以下、進化的新規形質と記す)の獲得である。進化的新規形質の獲得メカニズムについては、その多くが単一事象の変化(一遺伝子の獲得など)ではなく、複数の形質の変化、転用によってもたらされると考えられている。この際の、進化的新規形質の獲得、形成に転用される形質の、その転用される以前の状態や機能、またその転用されるプロセスを“前適応(pre-adaptation)”といい、進化学上における重要な概念となっている。しかし、これまでの前適応に関する研究は理論的、生物哲学的なものが多く、前適応の具体的な分子メカニズムについてはほとんど明らかになっていなかった。本研究課題では、真骨魚類心臓にみられる進化的新規形質“動脈球”の進化と発生に着目することで、前適応の分子メカニズムの解明に迫ることを目的としている。 本年度は、これまでにゼブラフィッシュ胚動脈球において発現することが確認されていたfibulin5, itga8, rgs5aについてその機能解析をおこなった。アンチセンスモルフォリノオリゴによるノックダウンをおこなったところ、上記3つの因子いずれにおいても心臓、動脈球の形態形成異常が観察された。さらに、その細胞運命について解析したところ、本来は主に平滑筋によって構成されている動脈球において心筋細胞が異所的に観察された。これは、動脈球の発生と進化に重要な役割を担っているelastin bの機能阻害胚においても同様の表現型が認められることから、上記3つの因子がElastin bの重合・機能に必須である可能性が考えられる。以上から、上記3つの因子は動脈球構成細胞の細胞運命決定に関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍において、実験をおこなう機会が予定よりも減ってしまった。また、飼育しているゼブラフィッシュに餌を与える日数も減ってしまったため、交配させ胚を得ることが通常時よりも難しくなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定した候補因子群、fibulin5, itga8, rgs5aについて、その機能解析をより詳細に進めていく。現在はアンチセンスモルフォリノオリゴによるノックダウンを中心に進めているが、並行してCRISPR/Cas9によるノックアウト系統の作出も進めており、ホモ変異体が得られ次第、表現型の解析をおこなう。また、これら候補因子群の機能阻害胚におけるelastin bの発現パターンを確認し、動脈球形態形成における役割について、elastin bとの関係性から迫る。さらにポリプテルス胚におけるこれら候補因子の発現パターンと機能について明らかにすることで、前適応の分子メカニズムに迫る。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において研究の進捗状況が予定よりも遅れたため。次年度使用額としてはfibulin5, itga8, rgs5aの機能阻害とその表現型解析、またポリプテルス胚の入手と実験に使用する予定である。
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