2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the pre-adaptation mechanism underlying the evolution of heart outflow tract
Project/Area Number |
20K06773
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
守山 裕大 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40646212)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動脈球 / elastin b / 硬さ / 細胞外環境 / 細胞運命決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、真骨魚類における進化的新規形質である“動脈球”の発生と進化、また前適応のメカニズムについて、elastin b遺伝子(以下elnbと記す)の機能に着目することで明らかにすることである。これまでに得ていた研究結果から、elnbが動脈球予定領域(流出路)において発現し、細胞外環境を変化させることで動脈球構成細胞の細胞運命を制御し、動脈球を作り出していることが示唆されていた。細胞外の硬さなどの情報を細胞内に伝えるメカノトランスデューサーであるYAPの機能阻害において動脈球構成細胞の細胞運命が心筋へと変化していたことから(通常は動脈球は主に平滑筋から構成される)、細胞外環境の硬さが動脈球の発生と進化に重要な役割を果たしているのではないかと仮説を立て、本年度では原子間力顕微鏡と脱細胞化技術を組み合わせることにより、動脈球や心室といった心臓各部位における細胞外環境の硬さを定量化した。まず真骨魚類であるゼブラフィッシュ成魚の動脈球における細胞外環境の硬さを定量化したところ、心室のものと比べて有意に柔らかいことが明らかとなった。また、elnbのノックダウン、ノックアウトゼブラフィッシュ成魚の動脈球において観察された異所的に心筋が形成された領域の細胞外環境の硬さを定量化したところ、心室のものと同程度にまで硬くなっていた。さらに非真骨魚類であるポリプテルスの流出路(動脈球と相同な領域)では心室のものと同程度の硬さであり、両者の間に有意な差は認められなかった。また、ゼブラフィッシュ胚発生過程の動脈球領域における細胞外環境の硬さを定量化したところ、elnbの発現開始(受精後3日胚)後において動脈球領域特有の柔らかさが確認された。以上から、elnbは流出路における細胞外環境を特徴的な柔らかさにすることで動脈球構成細胞の細胞運命を制御し、動脈球形成に寄与することが示唆された。
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