2022 Fiscal Year Annual Research Report
食虫植物の消化酵素の起源と進化:遺伝子発現様式の変更による新規形質獲得の普遍性
Project/Area Number |
20K06777
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大山 隆 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60268513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食虫植物 / 消化酵素 / モウセンゴケ / S1型ヌクレアーゼ / トランスクリプトーム / エピジェネテュクス / 植物ゲノム / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、食虫植物Drosera adelaeの消化液中に存在するS1型ヌクレアーゼの構造と機能について詳らかにした。我々は、当該酵素をDAN1、その遺伝子をDan1とそれぞれ命名して、Dan1の構造と発現、DAN1の構造および他の植物の同型酵素との構造比較、至適pH、至適温度などの解析を実施した。遺伝子構造はゲノムDNAおよびcDNAの解析から明らかにした。遺伝子発現の解析はトランスクリプトーム解析により行い、Dan1は腺毛特異的に発現していることを明らかにした。なお、その発現制御にはエピジェネティックな機構は関与していないことが示唆された。この点は、エピジェネティックな発現制御を受けていると考えられるS様リボヌクレアーゼ(やはりD. adelaeの消化液中に存在する; FEBS Lett., 2005)の遺伝子とは対照的である。蛋白質構造に関しては、他の食虫植物の酵素との高い相同性が示された。また性状解析からは、亜鉛イオン、 マグネシウムイオン または カルシウムイオンの存在下でこの酵素はDNAよりもRNAを好んで消化することが示された。 これらの成果は、Ann. Bot. 誌に発表した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として主なものを挙げると、(i)D. adelaeの消化液中に存在する消化酵素の全貌を明らかにし、(ii)幾つかの酵素については、性状と遺伝子発現の器官特異性を解明し、(iii)それら遺伝子の発現制御機構について様々な知見を得た。また、(iv)食虫植物の消化液中に存在する消化酵素をコードしている遺伝子と食虫植物や非食虫植物の根で発現している遺伝子との高い相同性を発見した。これらの幾つかについては、J. Exp. Bot. 誌に2021年に発表した。以上のように、重要な成果が幾つか得られ、それらの一部を2本の論文として発表することができた。
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