2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06778
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
廣岡 俊亮 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任助教 (70843332)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 藻類 / 有性生殖 / 比較ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
有性生殖は減数分裂を介して雌雄それぞれの配偶子を形成し、それらが融合することで両親とは異なる遺伝子型を作る仕組みで、真核生物に普遍的に存在している。近年のゲノム解析の発展により、様々な生物で性決定領域、性決定遺伝子が明らかになり、性決定の仕組みは生物ごとに異なっており、種々の系統で独立に獲得されてきたことが示唆されている。有性生殖は、同形配偶からより複雑な異形配偶、卵生殖へと進化したと考えられていることから、同型配偶を行う単細胞真核生物の中には、今なお、性を獲得して間もない状況に近い機構を維持している生物種がいることが期待される。本研究では、同形配偶を行う単細胞紅藻類を有性生殖研究におけるモデル生物系統群として開発し解析を行うことで、その性決定機構、起源及び進化過程の解明を目指す。 これまでに原始紅藻類を用いた研究を行う過程で、単細胞紅藻には存在しないと考えられてきた有性生殖過程(減数分裂による2倍体から1倍体の発生)を発見した。本年度は、本藻類株の2倍体、1クローンより生じた1倍体の複数クローンのゲノム配列を解読し、それらの配列を比較することで、相同染色体間での組換えの起こらない領域(性決定領域の候補)を見つけることが出来た。この領域が系統の異なる単細胞紅藻類(対象とする単細胞紅藻類には数億年から十数億年前に分岐した株が存在している。)においても保存されているのか否かを明らかにする為に、対象とする系統群に属する株において有性生殖過程の探索を行い、新たに4株の有性生殖過程を発見するに至った。そこで、4株それぞれについて、2倍体、1クローンより生じた1倍体の複数クローンを取得し、現在これらのゲノム解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに有性生殖過程を発見した単細胞紅藻、1株のゲノム解析を行い、その性決定領域の候補を見つけることができた。また、系統の異なる単細胞紅藻類においても新たに有性生殖過程を発見することが出来た。従って、研究は計画通り順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たに有性生殖過程を発見することが出来た4株の性決定領域の候補を明らかにし、それらを比較することで、対象とする生物系統群において、性決定領域がどのように獲得され進化してきたのかを考察する。また、現在のところ研究室環境での接合条件は見つけられていない為、様々な条件(栄養飢餓ストレス、日長変化、化学物質等)での培養を行い、接合条件を探索する。
|
Causes of Carryover |
次世代シーケンサーによる塩基配列データ取得の外注費用を当初想定していた額より抑えられた為、次年度使用額が生じた。これについては、次年度に予定している遺伝学的改変に必要な試薬等の購入に充てる予定である。
|