2022 Fiscal Year Research-status Report
ヤスデ類におけるミュラー型擬態環の形成、消失、移行をもたらす進化機構の解明
Project/Area Number |
20K06799
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田邊 力 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30372220)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 擬態 / 寄生 / 自然選択 / ヤスデ / ハエ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題について以下の成果を得ることができた。 (1)ヤスデ類の毒腺サイズ測定:ヤスデ類ミュラー型擬態環の進化に影響を与えるものとして、ヤスデ類の4つの体色モルフ(ミドリババヤスデ灰色、同灰とオレンジの中間色、同オレンジ、アマビコヤスデ灰色)間の毒腺サイズ(毒のコスト)の違いを考え、毒腺サイズデータを見直すとともに再測定並びに追加測定を行い、計雌26集団、雄24集団のデータとし、体色モルフ間の毒腺サイズ差の比較を行い、体色モルフ間で差がないとの結論を得た。 (2)ヤスデ類に寄生するハエ類の自然誌データの整理:ヤスデへのハエ捕食寄生の影響を明らかにするための基礎情報として、撮影済みのハエ産卵行動ビデオの解析を行い、各行動を定義し、産卵行動のシーケンスを明らかにした。また国内の対象ハエ類の分類と分布データを整理し、種別に分布図を作成した。 (3)ヤスデ擬態環を構成する種のまとめと対象ヤスデ類の分布情報の整理:国内373サイトにて、ヤスデ擬態環の種構成を明らかにした。また、研究課題の基礎情報として、国内の対象ヤスデ類の分布情報を体色モルフ別に整理し、分布図を作成した。 (4)ヤスデ類の体色の祖先状態復元と体色移行パスの解析:対象ヤスデ類体色の祖先状態復元を解析プログラムを変更して再解析した。次に、それに基づき、著しい体色多様化を示すミドリババヤスデ種複合体において、どの体色からどの体色への移行がよく生じているのかを明らかにした。 (5)これらの成果について、学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れた理由としては、第一にヤスデ擬態環を構成する種の整理とヤスデ類分布情報の整理において、国内373サイトの膨大なデータの整理に時間を要したことが挙げられる。また、ヤスデ類毒腺サイズの測定は技術的な困難を伴い、予想以上に時間を要したことも研究の遅れの要因であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
雇用の活用:本研究課題では、多岐に渡る多数のデータの取得、クリーニング、整理並びに複雑な論文用図表の作成が必要になる。これらの遂行には多大な労力を要するため、雇用による技術支援を活用する。
|
Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況:当該助成金が生じた理由としては、R2年度から、コロナ禍により、学会大会参加及び野外調査に伴う旅費を計画通りに執行できなかったことが大きい。 使用計画:研究の進捗としては、データ解析の仕上げと研究課題の最初の論文原稿の執筆に入っており、雇用によるデータの最終的な整理と原稿用の図表作成への技術支援が、研究課題を進める上での効率のよい使用計画となる。
|
Research Products
(4 results)