2020 Fiscal Year Research-status Report
熱水噴出域固有生物の集団形成と共生細菌に関する研究
Project/Area Number |
20K06804
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
小松 浩典 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (10435737)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 熱水噴出域 / ホウキガニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにするため、ホウキガニ科カニ類を材料として、種分類の再検討、地理的分布の把握および集団遺伝解析を行う。熱水噴出域は時として隣同士でも1,000km以上離れていることもあり、その固有生物がどのように分布を広げているのかは長年の謎となっている。その謎を解明するためには、採集に特殊な研究船を必要としない、浅海に生息するホウキガニ類は格好のモデルとなる。また、有毒な硫化水素を無毒化する細菌をホウキガニ類は体内共生させているが、その共生細菌相の遺伝解析を通じて、ホウキガニ類が共生細菌をいつ、どこで獲得し、どのように伝搬するかを明らかにする。 今年度は伊豆諸島の式根島、薩南諸島の薩摩硫黄島、口永良部島でホウキガニ類の採集を行った。その結果、各島で集団遺伝解析に必要な個体数を採集することができたとともに、式根島および口永良部島では抱卵雌を得ることができた。特に口永良部島はこれまで正式なホウキガニ類の報告がなく、これが初記録となる。また一方で甲殻類の貝形虫類、ヨコエビ類、タナイス類および軟体動物の後鰓類が熱水噴出域から採集され、各分類群の専門家と分類学的研究を進めているところである。これらは噴気の弱い所で見つかったため、熱水固有ではない可能性が高いが、広い意味での熱水生物群集と言えよう。今後、これらの鰓からDNAを抽出し、細菌類のメタバーコーディングを行うことによって、共生細菌の有無を明らかにしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおり、伊豆諸島および薩南諸島で調査を行うことができ、ホウキガニ類の標本を採集することができたため、順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続きトカラ列島や硫黄鳥島など、火山性噴気の見られる海域で調査を進めていくとともに、共同研究者によって西之島でも調査を行う予定である。西之島はニシノシマホウキガニのタイプ産地であり、トポタイプ標本を採集することは分類学的研究において非常に重要である。得られた標本からDNAを抽出し、順次ミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列を決定し、集団遺伝解析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
他の予算で購入した遺伝子解析試薬に在庫があったため、今年度は試薬を購入しなかった。また、バイトを雇わず小規模な実験のみを自ら行ったので、謝金を使用しなかった。そのため残額が生じた。これらは次年度の試薬代と謝金に充てる予定である。
|