2020 Fiscal Year Research-status Report
Reinforcement of reproductive isolation in haplodiploid spider mites
Project/Area Number |
20K06810
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 幸恵 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60414629)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 交雑帯 / 山岳 / 標高 / 雑種形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまであまり注目されてこなかった半倍数性の遺伝システムをもつ近縁ハダニ2種を対象に、生殖隔離の強化の検証を行うとともに、交雑帯における遺伝子流動や雑種の適応度、そして半倍数性の特徴が強化に与える影響を調査することにより、半倍数体における生殖隔離の強化の条件や倍数体との違いを考察することを目的としている。具体的には、日本列島にて温暖地に分布するススキスゴモリハダニHG型と、寒冷地に分布するトモスゴモリハダニを対象に、①生殖隔離の強化の検証、②交雑帯での遺伝的集団構造の解析、③雑種の形質・適応度の調査、④半倍数性の特徴が強化に与える影響調査、といった4調査を計画している。 当初の計画では、初年度に調査①を行う予定であった。調査①を行うためには日本全国各地から本ハダニ類16個体群を採集し、飼育系統をつくることが不可欠である。しかし、COVID-19のためシーズン中に全国各地からハダニを採集してくるのは難しいと判断し、初年度は二年目以降に予定していた調査②を遂行した。西日本では、標高の低いところにススキスゴモリハダニHG型が、高いところにトモスゴモリハダニが分布する。これら2種の交雑帯候補地として静岡県天城山に着目し、標高約50m毎にハダニを採集した。採集した雄をスライド標本にし、形態計測を行い、その形態の違いから2種の分布状況を調査した結果、標高100-400mという広範囲で2種の分布は重なっていた。また、強い接合前隔離のため種間交尾がおこると雄(haploid)が過剰生産されることから、雄比でもって交雑有無の推測が可能であるが、2種とも確認された地点の雄比は1種のみが確認された地点に比べて高くなる傾向にあった。そして、 2種の中間的な形質を持つ個体や、第3脚の節が少ない奇形の個体も確認されたことから、天城山中腹はこれら2種の交雑帯として有望であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査②は2か年計画であり、1年目に交雑帯として有望な場所を見つけることができるかが、要であった。しかし、上記のとおり1年目でもって交雑帯として有望な場所をみつけることができ、かつ集団遺伝解析に使うハダニ雌個体を入手することができた。このことから、調査順番に変更は生じたものの、順調な滑り出しといえる。一方で、未だCOVID-19は深刻な状況にあり、調査①に関しては実行のめどがたっていない。そのため、今後の進展には不安が残るスタートとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、調査②をすすめる予定である。上記調査で入手したハダニの雌は、遺伝解析用にアセトン漬けにして保存した後、1個体からDNAを抽出してある。今後は、このDNAテンプレートを使って、次世代シーケンサーを用いたゲノムワイドな塩基配列多型検出法、multiplexed ISSR genotyping by sequencing (MIG-seq)により、Single Nucleotide Polymorphism (SNP)を検出して、SNPを遺伝マーカーに集団構造解析を行う。また、調査③と調査④も進めていく予定である。これら調査を遂行する上で必要な寄主植物(ススキ)の鉢植えやインキュベーターは整備済みである。調査①に関しては、COVID-19の流行状況の様子をみながら検討していく。状況次第では、調査①の手法または内容を変更する考えである。
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Research Products
(5 results)