2021 Fiscal Year Research-status Report
Reinforcement of reproductive isolation in haplodiploid spider mites
Project/Area Number |
20K06810
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 幸恵 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60414629)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 接触帯 / 遺伝浸透 / 山岳 / 標高 / 半倍数体 / ハダニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまであまり注目されてこなかった半倍数性の遺伝システムをもつ近縁ハダニ2種を対象に、生殖隔離の強化の検証を行うとともに、交雑帯における遺伝子流動や雑種の適応度、そして半倍数性の特徴が強化に与える影響を調査することにより、半倍数体における生殖隔離の強化の条件や倍数体との違いを考察することを目的としている。具体的には、日本列島にて温暖地に分布するススキスゴモリハダニHG型と、寒冷地に分布するトモスゴモリハダニを対象に、①生殖隔離の強化の検証、②交雑帯での遺伝的集団構造の解析、③雑種の形質・適応度の調査、④半倍数性の特徴が強化に与える影響調査、といった4調査を計画している。 2年目である今年度は、研究②で昨年度のフィールド調査により見つかった静岡県天城山における接触帯を対象に、交雑状況や遺伝子浸透状況の調査を行った。標高100~450mにかけて両種の分布が確認された8地点、ススキスゴモリハダニHG型のみ確認された2地点、トモスゴモリハダニのみ確認された5地点、計15地点から採集された雌ハダニ288個体を対象に次世代シーケンサーを用いたゲノムワイドな塩基配列多型検出法、Multiplexed ISSR Genotyping by sequencing (MIG-seq)により、Single Nucleotide Polymorphism (SNP)を検出した。161ものSNPが検出され、そのうち50%以上のSNPが検出された237個体を対象にSTRUCTURE解析を行った。その結果、雑種と思われる個体は確認されなかった。トモスゴモリハダニでありながらもごくわずかにHGの要素をもっている個体はみられたものの、237個体中1個体と、ごくわずかであった。従って、2種の接触帯では遺伝子浸透は著しく抑制されていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響のため、初年度から当初計画とは異なる順番で研究を進めている。昨年度の報告書では、今年度は調査②に加えて、調査③と調査④もすすめる予定であった。調査②に関しては結果をだし、学会発表も行った。一方、調査③と④に関しては、報告できるだけの結果を得ることができなかった。そのため、「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2022年度は、雑種の形質・適応度の調査(調査③)を遂行する。初年度と次年度の研究結果から、2種の分布は天城山中腹にて広く重なっており、野外性比から種間交尾がおこっていると考えられたにも関わらず、その接触帯での遺伝子浸透は著しく抑制されていた。しかし、室内の交配実験では妊性のある雑種がえられていることから、雑種は形成されていないというよりは、形成されても野外では生き残れていない可能性が高いと思われた。例えば、本種群ではメス成虫が休眠にはいり越冬するが、これら2種間では休眠性に違いがみられる。雑種は休眠性に異常があり上手く越冬できないかもしれない。また、本種群の生態から、雄は捕食者や同種雄に対する攻撃能力が低いと子孫を残すことができない。そのため、雑種の攻撃能力も重要と思われる。そこで、調査③として、これら雑種の野外生存に関わる形質を調べ、どういったメカニズムの下、2種は接触しながらも遺伝子浸透が抑制されているのかを明らかにしていきたい。 また、昨年度に計画していた調査③と④で成果が得られなかったのは、寄主植物であるススキで病害虫が発生し、ハダニ飼育個体群では病気が蔓延した影響が大きい。そのため、ススキの栽培環境とハダニの飼育環境の大幅改善に取り組んで実験にのぞみたい。そして、初年度と次年度の結果を論文にまとめ国際誌に投稿する考えである。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響のため、野外調査の規模縮小、ならびに学会参加に旅費がかからなかったため、未使用額が生じた。次年度の国際会議と国内学会への参加費に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)