2022 Fiscal Year Research-status Report
宿主巻き貝-吸虫類寄生虫系に注目した干潟生態系への気候変動影響の評価
Project/Area Number |
20K06819
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
金谷 弦 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主幹研究員 (50400437)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 萌 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 特別研究員 (20772817)
中井 静子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40582317)
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 寄生 / 二生吸虫 / ウミニナ類 / 干潟生態系 / 感染率 / 緯度変化 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生虫は宿主の行動、代謝や成長を変化させ、個体群動態をコントロールする。本研究では、干潟で優占する巻き貝ホソウミニナ(二生吸虫の第一中間宿主)に注目し、九州~北海道までの広域現地調査によって各地のホソウミニナ個体群における感染率と吸虫類の種組成を調べ、次に室内実験によって感染がもたらす宿主の代謝変化と、セルカリア幼生遊出速度の温度依存性を調べることとした。 2022年度は、前年度までに調査を行った44地点(対馬~北海道有珠湾)に加え、有明海と八代海を含む九州西部4地点、和歌山県や広島県を含む瀬戸内海6地点、厚岸湖から網走周辺までの北海道東部7地点、関東~伊勢三河湾の4地点、仙台湾から陸奥湾までの東北地方7地点を含む28地点でサンプリングを行った。採取したホソウミニナ(各地点30~500個体)は生かしたまま実験室に持ち帰り、殻を割って軟体部を解剖し、実体顕微鏡下で二生吸虫への感染の有無を確認し、セルカリア幼生とレディア・スポロシストの形態から吸虫類の種同定をおこなった。未感染個体については、生殖巣の形態から性別を判定し記録した。 2020年度~2022年度までの調査結果を解析したところ、72地点で計7種の二生吸虫が確認され、地点あたりの最大出現種数は6種であった。東京湾以西の多くの地点で感染率が0~5%と低く、仙台湾以北の地点では感染率が50%を上回る地点も多くみられた。全72地点での平均感染率は31±34%であり、緯度と感染率および吸虫類の多様性の間には有意な正の相関が認められた(p < 0.0001および p < 0.05, n = 72)。2022年度はさらに、宿主と寄生虫の栄養関係を推定するための安定同位体比測定用サンプルを、仙台湾の櫃ヶ浦、沢田、浦宿、舞根、松川浦および鳥の海で採取した。サンプルについては、現在安定同位体分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大により特に初年度の野外調査が十分に行えなかったが、二生吸虫への感染率および寄生虫多様性の緯度間比較を行うための全国調査については、2022年度までに十分な調査地点数で実施することが出来た。一方、2022年度中に予定していた水温-セルカリア幼生の遊出速度の関係を調べる室内実験については、研究期間を延長して2023年度中に実施予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ほぼ100%近い感染率が確認された仙台湾内の干潟で、Cercaria batillariaeに寄生されたホソウミニナを採取して実験室に持ち帰り、セルカリア幼生の遊出が確認できたホソウミニナを飼育し、様々な水温条件間でセルカリア幼生遊出量を比較し、温度環境の変化が二生吸虫-宿主巻き貝間の相互作用に及ぼす影響を評価する。
|
Causes of Carryover |
他の研究課題における調査と合わせた形で野外調査を行った結果、旅費の支出が低く抑えられた。また、室内実験についても次年度以降に実施することとしたため、実験用の試薬や器具等に関する支出が想定を下回ったため。
|
Research Products
(7 results)