2020 Fiscal Year Research-status Report
生物群集全体と各2種間相互作用との関係を人工生態系での総当たり実験により解明する
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20K06825
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細田 一史 大阪大学, 国際共創大学院学位プログラム推進機構, 招へい研究員 (30515565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 実験生態系 / 人工生態系 / 生物群集 / 種間相互作用 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物による人工生態系を用いて、群集全体と各2種間相互作用総和の関係を解明する。全体として次の5項目を行う:[1] 単種の系、2種の系、全種の系の実験と測定、[2] 機械学習による生物種同定手法の確立、[3] 全種のデータから推測される種間相互作用と、2種のデータとの比較、[4] 単種及び2種のデータからの全種予測と、全種のデータとの比較、[5] 総合解析とまとめ。このうち2020年度には計画通り[1]および[2]についておこない、以下のような結果を得た。 [1] 単種の系、2種の系、全種の系の実験と測定:12種の微生物を用いて、単種(12通り)、2種(66通り)、3~12種の系(35通り)を作成し、観察した。それぞれについて、完全に閉じ続ける閉実験と、2週間に一度だけ開けて環境を交換する開実験の両方を行った。結果として、単体で生存可能または不可能な生物種、および他の生物種との組み合わせにより生存可能となる生物種など、各生物種間の相互作用の概要が明らかになった。なお、いずれの条件であっても生存できない種も一つだけあった。 [2] 機械学習による生物種同定手法の確立:機械学習の最適化を行った。各生物種の単種の系の顕微鏡画像を教師データとし、深層学習の一種である物体検出法YOLOを用いて各生物種の特徴を学習させた。以前から実用可能にはなっていたが、精度や適用範囲に問題があった。そのため、これまでのポリマーフィルム底プレートでの顕微鏡観察に加え、ガラス底プレートを用いて深度の正確性を向上し、様々な焦点深度での顕微鏡観察を行って教師データを豊富にすることにより、性能を改善した。結果として、9種生物に関しては1%以下の誤差で検出可能となった。なお残りの3種に関する検出の問題は、機械学習の精度とは無関係であるため、別の解決策を用いることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の通りの結果を得ているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、計画通り、研究実績の概要にある[3]および[4]について、以下のように研究を推進する。 [3] 全種のデータから推測される種間相互作用と、2種のデータとの比較:全種培養での測定データの結果から、Empirical dynamic modelingを用いて、種間相互作用を推定する。一方で、単種および2種のデータから、相互作用の正負が検出できるため、これと比較する。 [4] 単種及び2種のデータからの全種予測と、全種のデータとの比較:3種以上のデータを用いずに、単種と2種のデータを説明するモデルを作り、このモデルが3種以上のデータをどれだけ予測できるかを調べる。予測方法は様々あるが、まずは統計モデルとして一般化線形モデル(GLM)、動態モデルとして多種のMonod型モデルから試していく。ここから得られた誤差から、これらのモデルを改善していく。これにより、単種と2種のデータのどのような情報を用いると、全種のどの部分がどの程度だけ予測できるのかをまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた技術補佐員の雇用による実験や、旅費の使用がなくなった。研究内容としては、想定していた問題も大きなものは無かったため、計画通りに進んでいる。一方、当初予定に無かった研究代表者異動に伴う移転作業によりその他項目の使用が生まれたが、こちらの方が小さかったため、総じて次年度使用額が生じた。来年度以降、新型コロナウイルス感染症の状況が改善した時点で、当初計画通り、技術補佐員の雇用のために使用する。2021年度は難しいかもしれないが、ワクチンの普及に伴い2022年度には可能になると考えられる。仮に難しい状況が続きそうな場合には、実験自動化の機器購入などに使用して、研究を進める。
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Research Products
(8 results)