2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction for the spinal column in Nacholapithecus, 15 million years ago African fossil ape
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20K06835
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
菊池 泰弘 佐賀大学, 医学部, 講師 (70325596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナチョラピテクス / 中新世 / 大型類人猿 / Procrustes解析 / 三次元幾何学形態測定学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は化石化の過程で変形した化石標本の原型復元方法を精査し、実際に変形しているナチョラピテクス標本に応用させることで現生種との比較分析が可能となった。復元対象の標本はナチョラピテクス上位胸椎標本KNM-BG48094(第3~5胸椎と推定)で、多くの残存部位を有していることから復元には適している。現生霊長類の比較標本は、大型類人猿3種、小型類人猿1種、旧世界ザル13種(樹上性3種、半地上性8種、地上性2種)、新世界ザル2種の第3~第5胸椎とした。これらの標本をBruker社製およびStratec社製のCTスキャナーを用いて断面撮像データを取得し、三次元再構築することで座標系に展開した。次に、化石標本を含む各標本における相同点85点を決め、サイズの正規化と位置合わせをProcrustes解析で行った後、座標(シェープ)を主成分分析で解析した(三次元幾何学形態測定学)。分析の結果、復元前のナチョラピテクス胸椎標本は、アヌビスヒヒ、パタスモンキー、ムーアモンキーに近い形態を示し、これら3種の第1~6主成分を用いて、変形成分の除去を行い原型に復元した。具体的にはナチョラピテクス標本の相同抽出点から、上記3種それぞれにおける相同点の距離の総和を算出することで、化石の塑性変形成分を選択的に除去する作業を行った。原型に復元されたナチョラピテクス胸椎は、現生種との比較分析より、椎体や椎孔の形態や、椎体幅に対する横突起幅や上関節突起幅の比は、地上性旧世界ザルに似た特徴を示した。一方で、棘突起や上関節突起・関節面間の角度、そして椎弓に対する横突起の位置や角度は、樹上性旧世界ザルのものに近いことが分かった。さらに、横突起先端と椎体・上肋骨窩との距離は、現生霊長類の中における上限値に近い値を示した。得られた結果の機能形態学的解釈は慎重を要するため、今後、他の椎骨の特徴を加味した考察を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化石化の過程で変形したナチョラピテクス標本の原型を復元することができ、現生種との比較分析によって、大型類人猿の共通祖先が生息していた時代の中期中新世類人猿化石における貴重標本・胸椎の特徴を見出すことができたため。また、本分析は今後、他の部位にも応用可能でその発展性が立証できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
記載とマクロ形態計測による線形分析ですでに公表済み(Kikuchi et al., 2012; Kikuchi et al., 2015; Kikuchi et al., 2016)である標本を対象にして、変形成分除去による原型復元を行い、より精度の高い情報を引き出すことによって、機能形態学的解釈を推し進め、脊柱全体から見たナチョラピテクスの移動運動様式推定を行っていきたい。対象となるナチョラピテクス標本は、残存部位が良好な環椎標本、第6頸椎標本、最下胸椎標本(post-diaphragmatic vertebra)、第一仙椎標本を対象とする予定である。国外における化石種および現生種の調査は、年度の後半に可能であれば遂行する(Covid-19の感染状況で判断)。上記分析結果は、随時国内学会や学術雑誌で公表していく。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により国外・国外出張・調査ができず、旅費を翌年度に持ち越したため。使用計画:Covid-19の感染状況を見て可能であれば年度の後半に国外調査を遂行する。
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