2022 Fiscal Year Research-status Report
Dose-dependent effects of head-ward fluid shift with hypercapnia on cerebral blood flow autoregulation
Project/Area Number |
20K06844
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩崎 賢一 日本大学, 医学部, 教授 (80287630)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 洋二郎 日本大学, 医学部, 准教授 (60434073)
加藤 智一 日本大学, 医学部, 助教 (10786346)
田子 智晴 日本大学, 医学部, 助手 (70780229) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 体液シフト / 脳血流調節 / 高二酸化炭素血症 / 頭低位 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き2022年度も、1被験者について3つ全ての頭低位角度の負荷をランダムな順番で日を変えて「短期間で同一被験者の反復測定」を行い、被験者選定の手続きの時間の削減と、コロナ禍における被験者募集の困難さへ対策し、感染予防も文部科学省の「感染拡大の予防と研究活動の両立に向けたガイドライン」に基づきながら実験を行った。その結果、2022年度は6名の被験者の実験を行い、これまでに総計で被験者20名に3つ全ての頭低位角度の負荷を実施でき、当初の目標数の被験者からのデータ測定を行えた。そして現時点までで、得られた中間解析の結果のうちで、「HDTの傾斜角度が増加した場合に、3%CO2吸入による脳血流増加が増強されるか」を2022年11月までに測定・解析が終了していた健康成人17名を対象に検討した結果の要旨「3つのプロトコールのいずれにおいても、負荷によって平均脳血流速度が増加したが、プロトコール間で負荷中の平均脳血流速度の増加の程度に差は認めなかった。予想に反して、HDTの傾斜角度を大きくしても、傾斜角度30°までの頭低位であれば、頭側への体液シフトは高二酸化炭素血症による脳血流増加に影響を及ぼさないと考えられる」を、2023年3月に日本衛生学会の学術集会にて発表した。 また、以前行った「前屈および後屈の頭部位置の違いが脳循環に及ぼす影響を検討する実験」の測定データの脳血流速度波形と血圧波形を解析し、頭蓋骨内の圧力(頭蓋内圧)や脳還流圧の評価、急速な血圧変動に対する脳血流自動調節機能の評価を行い検討した。その結果、「健常成人では頭部位置の違いが脳還流圧等に差を与えても脳血流や自動調節には影響しにくい」という脳血流研究のプロトコール立案や結果解釈に資する新知見を得てPhysiological Reports誌にオープンアクセス発表することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1被験者について3つ全ての頭低位角度の負荷をランダムな順番で日を変えて「短期間で同一被験者の反復測定」を行い、被験者選定の手続きの時間の削減と、コロナ禍における被験者募集の困難さへ対策し実験を行った結果、実験が加速し、最終年度前に総計で被験者20名に3つ全ての頭低位角度の負荷を実施でき、当初の目標数の被験者からのデータ測定を行えた。今後、さらに解析を継続し、男女比などを考慮した実験の継続を検討する。そして、まず現時点までの中間解析で得られた、「頭低位の強度を増すことで閾値をもって交感神経活動に関連する周波数帯の血圧変動を減弱させる可能性」や、「予想通り高二酸化炭素により脳血流が増加するものの予想に反し頭低位30度までの体液シフトは付加効果を示さない可能性」、「頭低位中は静脈血のうっ滞によって還元型ヘモグロビン量が増し脳内酸素飽和度が低下するという予想に反し脳内酸素飽和度が上昇する可能性」などを発表出来ている。 また、周波数解析、伝達関数解析の結果、複合曝露による動的脳血流調節の悪化は5度の頭低位では有意にならないが10度以上の頭低位では有意に悪化する可能性などが捉えられているので、発表の準備を行っている。そしてさらに、以前に実施した実験で得たデータにおいて、頭蓋内圧や脳血流自動調節を同時に解析評価を行い、その結果得られた新知見を英文の原著論文として2編公表ができている。これらの過程において頭蓋内圧変化と脳血流自動調節の評価を同時に行い検討するための効率的なデータ処理の手順や解析方法が確認できている。このように現在までのおおむね順調に研究が進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
開始当初の計画通り、今年度までに、3通りの負荷(5度、15度、30度の頭低位+3%二酸化炭素負荷)の完遂被験者を20名とすることができたので、今後は20名の被験者の男女比のバランスを検討し実験を継続していくことを検討する。今年度が最終年度となるため、最終的に得られたすべての被験者のデータについて、動脈圧波形と中大脳動脈の血流速度波形から1心拍毎の平均血圧と平均脳血流速度を得て、高速フーリエ変換とクロススペクトル解析を施し両者の変動量と、血圧変動と脳血流速度変動の間の伝達の強さを、周波数帯ごとに数値化して脳血流調節機能の評価を行う。そして、複合影響によって「急速な血圧の自発変動から脳血流変動への伝達が増し動的脳血流自動調節能が低下する」ことへの、頭低位角度の違い(用量依存性)を検討する。その際にグループ平均の変化だけでなく、仰臥位からの変化の程度(変化率の群平均)と、20%以上変化する個体の割合(反応率)も用いて、用量(頭低位の角度)に対する反応関係があるか検証する。さらに当初の研究計画には含めていなかったが、これまでに、脳血流自動調節の評価に加えて頭蓋内圧変化を同時に検討するための効率的なデータ処理の手順や解析方法が確認できているので、頭蓋内圧の解析も行い、結果を検討し発表を行う。さらにまた、頭低位単独の脳血流および脳内酸素飽和度の変化の違いについて、保有データを解析し、論文発表を行うことを検討する。
|
Causes of Carryover |
2022年度もコロナ禍の影響で宇宙医学関連の海外学会の開催予定が不確定であり、対面クローズドの情報交換会の実施が行われない可能性もあった。そのため、成果発表の効果や情報取得・交換を確実にするため、予定していた成果発表の一部を日本の学会でのみの発表とし、米国の宇宙医学関連学会、NASAのヒト対象研究者の会議の発表は、昨年度に引き続き見送る方針とした。 そのため2022年度で出張費用が未使用になったものを2023年度の出張や発表準備に用いる予定である。 一方、以前に実施した「空気呼吸下の前屈および後屈の頭位」で得たデータにおいて、「頭蓋内圧と脳血流自動調節の両者を同時に解析評価し検討した。その結果、脳血流研究のプロトコール立案や結果解釈に資する成果(健常人で頭部位置の違いが脳還流圧等に差を与えても脳血流や自動調節には影響しにくいと座位で確認)」という興味深い成果を得た。その内容を国際的な生理学会のオープンアクセス雑誌に原著論文として公表ができたので、投稿・出版・オープンアクセス費用を支出した。
|