2020 Fiscal Year Research-status Report
皮質→海馬トップダウン制御による遠隔記憶形成メカニズム
Project/Area Number |
20K06849
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 亮 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60793916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遠隔記憶 / 海馬 / 帯状回 / RNAseq / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
恐怖記憶の形成・想起には海馬が必須である。しかし、時間経過とともに恐怖記憶想起に対する海馬の機能的役割は減少し、数週間以上の恐怖記憶を想起するためには大脳皮質の神経活動が必須となる。これは、海馬‐皮質間相互作用によって、記憶の思い出し(想起)に関わる脳領域が海馬から時間とともに皮質領域へと徐々に移行するプロセス(システムレベルの固定化)によるものと考えられているが、この海馬‐皮質間相互作用の実態は不明な点が多い。本研究では、遠隔記憶形成に際し、時間経過に伴って海馬機能が減弱するという現象が、「皮質(帯状回)→海馬トップダウン制御によって制御される」と仮定し、これを検証する。 実験1として、帯状回→海馬トップダウン制御を明らかにする端緒として、帯状回-海馬間に直接の神経回路が存在しているか検証するため、海馬あるいは帯状回に順行性トレーサーとしてrAAVを、逆行性トレーサーとして、Pseudo typeの狂犬病ウイルス、またはrAAV2-retroを感染させこれを検証した。その結果、これまでに同領域間において直接回路の存在が報告されているものの、本実験においては両領域間における直接回路の存在を見出すことはできなかった。なにか特別な実験条件の存在が考えられる。 実験2として、当初、海馬エングラムスパイン密度操作を遺伝子介入にて行う予定であったが、これは遺伝子発現によって海馬神経細胞自身の機能を変化しうるものと考え、その発現のみでは機能変化を誘導しないオプシン発現による光操作によって行うこととした。そのためのAAV作りを行い、スパイン密度操作のための最適条件を検討した。また、海馬あるいは帯状回活動を薬理学的に抑制するための条件検討を行った。 実験3として、単一細胞RNAseqを実施する準備段階として、海馬錐体細胞から単一細胞を生きたまま単離する実験系の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である遠隔記憶形成における帯状回の海馬機能制御機構についての実験に取り掛かるための実験条件の最適化など、来年度に研究を本格化させるための準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
帯状回-海馬間をつなぐ脳領域の同定を行うため、引き続き逆行性トレーサーや順行性トレーサーを用いて明らかにする。また、帯状回機能変化させた際の海馬活動の変化の有無について、カルシウムイメージングを用いて検討を開始する。海馬エングラムのスパイン密度変化、すなわち海馬エングラムの成熟と脱成熟がシステムレベルの固定化に対してどのような影響を与えるかについて検討を行っていく。単一細胞RNAseqを用いた時間経過に伴う海馬機能変化の分子メカニズムを明らかにするため、エングラム細胞・非エングラム細胞を単離し、RNAseqを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、出張費として経費を使用することがなくなったため。
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Research Products
(1 results)