2020 Fiscal Year Research-status Report
長期記憶保持に必要な細胞小器官の空間的構造変化と分子基盤の解明
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20K06852
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 奈津実 (石原奈津実) 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (60547561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習や記憶の細胞レベルの素過程は神経活動に応じてシナプス伝達効率が変化し、維持されるシナプス可塑性である。強い興奮性入力は樹状突起スパイン容積増加とAMPA受容体のシナプス後肥厚(PSD)へのリクルートを伴うシナプス伝達の長期的な亢進(LTP)を惹起する。さらに、スパインの可塑的変化は数時間以上継続し、蛋白質合成を伴う後期LTP(L-LTP)をもたらす。スパインの体積増加はアクチン重合によることが支持されている一方で、長時間にわたってスパインの可塑的な変化を維持するための何からのメカニズムの存在が示唆されており、記憶維持に関わると考えられているが、その実体はほとんど明らかになっていない。 申請者は重合性ヌクレオチド結合蛋白質ファミリーSEPT1-14から成るセプチン細胞骨格の神経回路形成・再編成・維持における生理的意義の研究を進めている。セプチンは分裂細胞では細胞質分裂の際に、赤道面でリング状に形成される収縮環の構成成分として分子の非対称性を保証する拡散障壁となり、細胞質を2つに分割する。しかしながら、セプチンは非分裂細胞ニューロンで高発現し、細胞質分裂を超えたセプチン細胞骨格の機能探索の必要性が示唆されていた。さらに、英国Biobankサンプルの大規模ゲノムワイド関連解析により認知能力を司る領域にセプチンサブユニットが存在することが報告された。そこで申請者は、セプチンの学習・記憶とシナプス可塑性への関与を評価し、セプチン欠損マウスは記憶保持障害を示すことを見出したため、神経基盤の探索を進め細胞レベルでの表現型を確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに実験が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞レベルでの表現型の神経回路に与える影響を精査する目的で、後シナプス領域の入力特異的なカルシウム濃度上昇と続く細胞内シグナル活性化を評価する。 カルシウムプローブ(GCAMP6とRCaMP2)とケージドグルタミン酸の光解離と薬理学的処理を組み合わせた可塑性誘発刺激を行い、誘導前後でカルシウム動態のデータを取得する。さらにセプチン欠乏を組み合わせることで、カルシウム動態を測定する。最終的にはセプチン、カルシウムの時空間的動態を高分解能イメージングで解析し、セプチン依存的なシグナル伝播の増強ないし樹状突起基幹部への波及を通じてLTPの長期持続に寄与することを示す。スパインという微小領域内のセプチンの動態をイメージングするためには顕微鏡のセットアップ、プローブの検定、実験系(ニューロンの初代培養系)の最適化が必要であるが、申請者はすべて予備実験を終えており、データ取得に向けて実験系を洗練させ、神経回路レベルでの表現型を決定する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により一次的に研究体制の縮小を行いました。現在は、研究活動を再開させており、当初計画が延長されましたが作製中の初代培養ニューロンを用いて回路レベルでの表現型を確定します。
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