2020 Fiscal Year Research-status Report
スパインの発達期から成熟期へのスイッチングを制御する新たな機構の解明
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20K06861
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
菅原 健之 北里大学, 医学部, 助教 (70584522)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海馬 / 神経細胞 / スパイン / リン酸化 / Arf6 / EFA6A |
Outline of Annual Research Achievements |
機能的な神経回路の構築には、興奮性シナプスの後部構造である樹状突起スパインの発達・成熟が正しく制御されることが不可欠である。生後発達期においてはスパインの急激な増加が起こり、一方で成熟期にはスパインの活発な形成は停止し、むしろ不要なスパインの除去が行われる。このような発達期から成熟期へのスパイン形態形成の方向性の移行には、神経活動が必要であるが、その分子機構は十分に解明されていない。本研究は、細胞膜とアクチン細胞骨格の再構成を制御する低分子量Gタンパク質Arf6の活性化因子であるEFA6Aに着目して、神経細胞が発達段階に応じて適切にスパインを発達・成熟させる分子機構を解明することを目的とする。 本年度は、EFA6Aのリン酸化部位の同定とリン酸化・脱リン酸化経路の解明を目的に実験を行った。発達過程および成熟後のマウス海馬で発現しているEFA6Aのリン酸化部位を質量分析により同定した。そして、これらのリン酸化部位の変異体EFA6Aを培養海馬神経細胞に導入し、細胞内局在に関与するリン酸化部位があることを見出した。次に、この部位がリン酸化されたEFA6Aを特異的に認識する抗体を作製した。作製したリン酸化EFA6A特異的抗体を用いた解析により、海馬神経細胞においてEFA6Aをリン酸化するリン酸化酵素を同定することができた。さらに、神経活動依存的にEFA6Aが脱リン酸化されること、これに関与する脱リン酸化酵素についても明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画通り、EFA6Aの細胞内局在の制御に関わるリン酸化部位と、リン酸化を制御するシグナル経路を明らかにすることが出来た。また、このEFA6Aのリン酸化がスパインの形態形成に及ぼす影響を解析するための実験の準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
EFA6Aのリン酸化・脱リン酸化が、発達段階や神経活動に応じたスパイン形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行う。そのために、変異体EFA6Aの導入やリン酸化シグナルの阻害剤などを使用して、それによる海馬神経細胞のスパインの密度や形態の変化を形態学的に解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
予定したより効率的に実験成果を得られたため、少額の残金が生じた。これを有効に使用するために、次年度に繰り越した。細胞培養に用いる消耗品に使用する予定である。
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