2020 Fiscal Year Research-status Report
髄鞘軸索間結合パラノーダルジャンクション依存的軸索恒常性維持機構の解明
Project/Area Number |
20K06863
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
石橋 智子 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (50453808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パラノーダルジャンクション / プルキンエ細胞軸索 / ミエリン |
Outline of Annual Research Achievements |
有髄神経軸索のランビエ絞輪部両隣に存在する髄鞘-軸索間結合paranodal axoglial junction (AGJ) の役割を明らかにするために研究を行なっている。AGJは軸索表面のチャネルの局在変化・維持に必須な障壁であるが、それ以上に軸索機能維持、特にカルシウム恒常性維持に重要な部位であると考えている。その証拠を得るために、AGJ形成不全マウスを用いて研究を行なっている。これまでにAGJ形成不全マウスの小脳プルキンエ細胞軸索に限局した腫脹が髄鞘形成後に認められること、軸索腫脹の引き金が、小胞体に存在するカルシウムチャネルであるIP3R1の過剰な集積である可能性を明らかにした。IP3R1陽性の軸索腫脹部位にはIP3R1以外にもカルシウム恒常性に関与する分子VDAC、ミトコンドリア融合に関する分子Mitofusion2、ミトコンドリアー小胞体膜近接領域に存在するSigmaR1、ERLIN2などの集積のあることを組織学的解析より明らかにした。これら分子の腫脹部への集積は、軸索局所のIP3R1陽性部位に限局して認められ、IP3R1の発現量に依存してミトコンドリアおよび小胞体の変化を含めた軸索局所のカルシウム恒常性の破綻が示唆された。すなわちAGJ形成不全軸索でもIP3R1の発現量を半分にすると軸索腫脹が軽減し、その後のプルキンエ細胞の脱落および軸索変性も改善された。これらの結果は、AGJ形成がプルキンエ細胞軸索のIP3R1の局在および発現量を制御する重要な構造であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
AGJ形成不全を呈するCST欠損ヘテロマウスとIP3R1欠損ヘテロマウスを交配することにより得たCSTホモIP3R1ヘテロマウス小脳(生後0から1日および胎生13日目)組織を用いた培養系で軸索腫脹を再現し詳細に観察することを目指していたが、マウスの交配率が極めて悪く令和2年度は培養に供することができなかった。成体マウス標本を用いた軸索腫脹部の電子顕微鏡解析の結果、AGJ形成不全を呈するCST欠損マウスのプルキンエ細胞軸索では、生後4週齢以前より既に小胞体の分布が正常マウスコントロールと比較して、不均一である傾向があり、以前の光学顕微鏡で得た結果を裏付けることができた。 プルキンエ細胞特異的プロモーターL7制御下でミトコンドリア-小胞体膜近接領域(MAM)および小胞体に豊富に存在する分子の発現ベクター作製を進めているので、令和3年度も引き続きベクター作製を行い完成させる。MAMの生化学的解析に関しては、ショ糖/マンニトール溶液を用いた超遠沈法により正常マウス脳組織からMAM画分を分離し、MAMに豊富に存在する分子に対する特異抗体を用いて精製を確認できた。今後AGJ形成不全を呈するCST欠損ヘテロマウス小脳およびCSTホモIP3R1ヘテロマウス小脳マウスからMAMを分離し、それぞれの構成分子の変化を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
AGJ形成不全を呈するCST欠損ヘテロマウスとIP3R1欠損ヘテロマウスを交配することにより得たCSTホモIP3R1ヘテロマウス小脳(生後0から1日および胎生13日目)組織を用いた培養系で軸索腫脹を再現する系を確立する。プルキンエ細胞特異的プロモーターL7制御下でミトコンドリア-小胞体膜近接領域(MAM)および小胞体に豊富に存在する分子の発現ベクター作製を完成させる。前述した培養細胞にトランスフェクションしAGJの状態と軸索内のそれら分子の挙動を詳細に調べるため、令和3年度は正常マウス小脳の培養細胞を用いてトランスフェクションの条件を確立する。初代培養へのトランスフェクションは毒性が強い可能性もあるのでトランスフェクション試薬を複数試すとともに、エレクトロポレーションで遺伝子導入することも視野に入れている。 正常およびAGJ形成不全マウス小脳プルキンエ細胞軸索内のMAMおよびERの構造と髄鞘の微細構造変化の解析に関して以下の実験を計画している。MAMはERとミトコンドリアの距離が30 nm以下の近接部位であると定義されているが、様々な病態下で両者がさらに近接し、可塑性に富んだ構造である。これまでの光学顕微鏡解析結果より髄鞘、特にAGJの状態と軸索内MAMの分布が変化する可能性が示唆された。したがって本年度は、正常の髄鞘形成時期(AGJ形成過程)および、髄鞘が完全に形成された成体マウス小脳プルキンエ細胞軸索を透過型電子顕微鏡を用いて髄鞘の状態と軸索内MAMの関与を解析する。その後AGJ形成不全マウス小脳でも同様に解析を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染による緊急事態宣言時に大学構内への入構が制限され、計画的に実験が行えなかったため。またマウスの交配・維持を計画的にできず予定通り実験が行えなかったために支出学が大幅に減り次年度使用額が生じた。
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