2020 Fiscal Year Research-status Report
Roles of extrinsic signals on fate choice of neural progenitor cells in the developing neocortex
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20K06868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50431896)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セロトニン / 神経前駆細胞 / 大脳新皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳新皮質の形成過程において、神経前駆細胞は脳室を取り囲む領域(脳室帯)に限局して存在する。大脳新皮質形成の初期段階では、神経前駆細胞は自己複製してその数を増やす。一方、発生が進むのに伴って神経前駆細胞は、神経細胞を生み出すようになる。このような神経前駆細胞の運命をコントロールする細胞外因子としては、母親由来の因子の寄与も推察される。しかしながら、脳発生に寄与する母親由来のシグナル分子の分子実体および作用機序に関する研究は充分とはいえない。本研究では、母親由来シグナルの候補分子としてセロトニンに着目した。私共はこれまで、発生初期の胎仔の前脳にはセロトニンが存在し、母マウスの血中セロトニン量を低下させると、胎仔の前脳セロトニン量が低下すると共に、前脳が小さくなることを見出した。また前脳の大脳新皮質において、神経前駆細胞数が顕著に減少していることが明らかになった。脳発生初期には神経前駆細胞が盛んに自己複製していることを考え合わせると、『母親由来セロトニンが神経前駆細胞のセロトニン受容体を介して自己複製を促進し、正常な脳形成に寄与している』可能性がある。本年度はまず。母親の血中セロトニンが胎仔脳に流入するのかを確かめるため、母マウスの血中にセロトニンを投与した。その結果、投与の5分後には胎仔前脳のセロトニン量が上昇した。また、神経前駆細胞の細胞周期を調べた。その結果、母マウスの血中セロトニン量を低下させると細胞周期が長周期化することが判った、一方、神経前駆細胞におけるセロトニンの役割を精査するため、神経前駆細胞を培養し、セロトニン投与の影響を調べた。その結果、セロトニンの投与によって、神経前駆細胞は神経分化しにくくなることが判明した。以上の結果、母親由来のセロトニンによって、神経前駆細胞は神経分化モードから自己複製モードへと変容し、その結果、神経前駆細胞数が増大すると推察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にしたがって研究は推移している。神経前駆細胞の培養系も確立し、セロトニンの役割解析に着手、さらに重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、培養した神経前駆細胞を用いて、セロトニンシグナルに関与する受容体を同定する。具体的には、個々のセロトニン受容体の拮抗薬を用い、セロトニン投与による影響を減弱させるセロトニン受容体のサブタイプを明らかにする。この解析により得られた知見を基に、in vivoにおいて、そのセロトニン受容体の役割を精査する。具体的には、マウス胎仔への遺伝子導入法(子宮内胎仔電気穿孔法)を用いて、そのセロトニン受容体サブタイプをノックダウンする。さらに、神経前駆細胞の挙動を調べ、セロトニン受容体シグナルの役割に迫る。この実験と並行して、そのセロトニン受容体サブタイプのノックアウトマウスを用い、神経前駆細胞の挙動がどのように変化するか調べ、ノックダウンの結果や培養した神経前駆細胞の結果と比較解析することにより、神経前駆細胞におけるセロトニンおよびセロトニン受容体を介したシグナリングの役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
神経前駆細胞の細胞周期の解析が期待以上に順調に進展した。さらに、神経前駆細胞の培養系の確立やセロトニン投与の影響解析も支障なく進展したため、購入および使用予定であった妊娠マウスの数が少なくて済んだ。そのため、次年度使用額が生じた。翌年度は、in vivoでの受容体の役割解析を主となる。翌年度分と本予算を合わせることで、妊娠マウス等を充分に使用することができ、さらに研究が効率よく進むと期待できる。また、本予算があることで、遺伝子改変マウスを複数種類購入することが可能になり、研究の進展に大きく寄与すると考えられる。
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