2020 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of corticospinal circuit during development-do single neuron have two different functions during development?
Project/Area Number |
20K06879
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
村部 直之 帝京大学, 医学部, 講師 (90348813)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経発達 / 皮質脊髄路 / 精緻化 / 頸髄 / 腰髄 / 神経解剖 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの皮質脊髄路は、他の神経回路同様、過剰投射・シナプス形成過程の後、軸索撤退・シナプス除去等により精緻化する。本研究では、成体では後肢の運動制御に関与する皮質脊髄ニューロンが発達初期には頸髄に投射し、前肢の運動制御に関与する可能性を検証することが目的である。 2020年度は、神経終末から感染するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)にCreリコンビナーゼを搭載し、幼若期に第7頸髄に注入することで、そこに投射したニューロンがCreを発現するようにした。その後、局所感染型のAAVでCre依存的に蛍光タンパク質を発現するコンストラクトを搭載したものを成体の大脳皮質後肢野に注入し、幼若期に第7頸髄に投射した後肢野皮質脊髄ニューロンの成体の投射先を調べた。その結果、幼若期に頸髄に投射した後肢野の皮質脊髄ニューロンが成体では腰髄に投射することを示す実験結果を複数取得し、統計的に評価できるようにした。この研究結果は、幼若期に頸髄に投射した皮質脊髄ニューロンが成体ではその投射先を腰髄に変更する解剖学的な証拠であり、本研究の三本柱の一つをなす成果である。この結果は、第何回日本神経科学学会で発表した。 次に、大脳皮質後肢野の皮質脊髄ニューロンが頸髄に投射している時期および撤退する時期を同定するために、生後発達を追い、第7頸髄に投射する皮質脊髄ニューロンの数および分布を逆行性標識により調べた。その結果、生後14日齢には生後7日齢の分布に近く、後肢野支配領野に多くの標識ニューロンが見られるが、生後4週には見られなくなることが分かった。つまり、生後2週と4週の間に最終標的が決定することが示唆された。この結果は、本研究の第2の柱である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ対策の一環として、昨年度4-5月の実験を行うことができなかったが、その期間はすでに取得した実験データの解析を主体とする研究活動を行い、研究活動を推進するすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、幼若期に頸髄に投射した皮質脊髄ニューロンが成体では腰髄に投射することを示す解剖学的知見(研究実績の概要参照)を論文にまとめる。 次に、研究の第2の柱である頸髄へ過剰投射した皮質脊髄軸索の撤退時期を決定する実験を継続し、例数を蓄積する。現在2時点(生後14日齢、28日齢)3例分の実験結果を得ており、2例分の追加を予定している。生後21日齢についても5例追加予定である。 研究の第3の柱である幼若期の予定後肢野への皮質内微小刺激をおこなうために、成体脳と幼若脳の空間的対応づけを行う。生後7日齢のマウスは、成体の約6-7.5分の1の体重であり、その脳も成体よりもはるかに小さい。そこで、幼若マウスの脳に生体色素でグリッド状にマークし、70日齢でそれぞれのグリッドが成体脳のどこに位置するのかを調べる。さらに、将来成体の後肢野あるいは腰髄投射領野になる幼若マウスの大脳皮質領域で皮質内微小刺激をおこない、刺激に応じて筋収縮が誘発される体部位を調べる。
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Causes of Carryover |
2020年度前半は、コロナ対応で在宅勤務を行うなど、すでに取得したデータ解析を中心に研究を遂行したため、直接経費の支出がなかった。また、2020年度後半は引き続きデータ解析をおこないつつ、一部実験も開始していたが、大学の研究費を用いたため、支出を計上しなかった。 2021年度は、動物実験を行う予定であり、それに付随する実験器具、動物、ウイルス等に支出する予定である。 本研究に必要な研究室で現有する脳定位装置、微量注入装置は研究室内の実験が増加して込み合ってきた。そこで、脳定位装置、微量注入装置および実体顕微鏡を購入する予定である。
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