2020 Fiscal Year Research-status Report
軸索発達促進因子25型コラーゲンの分子基盤と先天性脳神経支配異常症の病態機序
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20K06888
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 朋子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (20530330)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コラーゲン / 運動ニューロン / 神経筋接合部 / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
Collagen XX(ColXXV)は発生期の骨格筋に発現する膜貫通型のコラーゲンであり、運動ニューロンの軸索伸長に必須の役割を果たしている。本研究ではColXXVの神経軸索伸長の制御因子としての生理機能ならびにCCDDの病態機序に着目し、分子基盤の解明を目指す。 令和2年度にはまず、ColXXVの “骨格筋由来の軸索発達促進因子”としての役割を実証する目的で、筋特異的にColXXVを発現誘導することが可能な遺伝子改変マウスの作製に着手した。Cre依存的にColXXVを発現するloxP-stop-loxP-COL25A1をマウスゲノムのRosa26領域に組み込むためのターゲティングベクターを作製した。ベクターにはCRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集を可能とするよう改変を行った。受精卵へのマイクロインジェクションによりノックイン個体の作製を進めている。 また、ColXXVの軸索・骨格筋再生における機能に関連して、これまでに筋障害後の再生過程で新たに生成した筋管でのCol25a1遺伝子の一過性発現を見出してきた。令和2年度には、再生筋におけるCol25a1発現を、筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウスの骨格筋を用いて検討した。Mdxマウスでは筋の慢性的な変性と再生が生じるが、筋再生が最も盛んな5週齢マウスの下肢骨格筋を定量RT-PCR方で解析した結果、mdxマウスの筋におけるCol25a1 mRNAの発現上昇を認めた。本研究では、ColXXVの成体骨格筋における発現の誘導が、様々な筋再生過程で生じ得ることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染の拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、動物飼育の制限、新規遺伝子改変マウス作製の停止、研究活動の縮小の措置がなされ、年度前半に予定をしていた研究全般に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
ColXXVの “骨格筋由来の軸索発達促進因子”としての役割の実証について、令和3年度にはCre誘導性ColXXVトランスジェニックマウスを樹立し、骨格筋特異的Cre発現マウス(HSA-Cre)との交配を行うことで、発生期の骨格筋においてColXXVを持続的に発現するマウスを作製する。このマウスを用い、横隔膜を始めとする骨格筋における運動ニューロンの軸索の支配過程を、発生期を追って解析する。 ColXXVの軸索・骨格筋再生における機能に関連して、成体骨格筋におけるColXXVの機能を解析するため、NMJ形成後の骨格筋でCol25a1を欠損し、致死性をレスキューしたマウスを作出する(MCK-Cre;Col25a1flox)。このマウスに対し、軸索障害あるいは筋障害を誘導し、神経筋システムの再生過程へのColXXVの欠損の影響について解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染の拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、動物飼育の制限、新規遺伝子改変マウス作製の停止、研究活動の縮小の措置がなされ、年度前半に予定をしていた研究全般が遅延したため、令和2年度に予定していた使用額の一部を次年度に繰越する必要が生じた。
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