2020 Fiscal Year Research-status Report
軸索内に停止型ミトコンドリアを一様に分布させる機構の解明
Project/Area Number |
20K06889
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小西 慶幸 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (00382838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 軸索 / ミトコンドリア / 軸索輸送 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
髄鞘や分岐、シナプスなどの軸索内構造に依存せずに、停止型ミトコンドリアの一様性分布を制御する細胞内システムを明らかにする。作業仮説として、a)ミトコンドリア間のシグナルにより、間隔が均等になるよう維持されるモデルと、b)アンカー因子などがあらかじめ一様に存在することで停止位置が決定されるモデルを想定した。b)の機構の場合、ミトコンドリアの停止位置は変化しないと考えられが、個々のミトコンドリアの停止位置は変化するもの、全体的な分布の一様性が維持されることが示された。このためミトコンドリア間の相互作用により分布を制御する機構が存在すると仮定し、ミトコンドリアに局在する光増感タンパク質(Mito-KillerRed)を用いて、光分子不活性化(CALI)により軸索内の特定部位のミトコンドリアを光照射依存的なROSの発生により不活性化し、周囲のミトコンドリアの動態を解析した。ミトコンドリア間の相互作用が機能している場合は、照射部位のミトコンドリアが不活性化することで周辺から他のミトコンドリアが入り込むと予想していたが、CALIにより照射部周辺のミトコンドリアの運動性も低下することが示された。このため、機能的なミトコンドリア同士が近接する場合は、互いの運動性が高まることで距離が保たれる機構が存在すると予想された。介在する分子としてATPを想定し、軸索内分布やミトコンドリアの動態に対する影響について実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
優先順位の高い実験について、計画通りに順調に進んでいる。コロナ禍の影響もあり、一部の実験については予定と比べて進捗が遅れている部分がある。ミトコンドリア間の相互作用について、試行数を重ね統計的に評価することで、当初の予想と異なる結果が得られ、実験結果に合わせてモデルを修正した。修正したモデルは実験結果とも合致し、停止型ミトコンドリアの一様性分布の制御機構が説明できるため、これを元に研究を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
CALIは光照射に依存したROSの発生により不活性を行うため、非特異的な影響を完全に排除するのが難しい。このためCALIに加えて光スイッチにより局所的にミトコンドリアの停止を制御するための実験系を確立する。長時間の制御を目的としているため、解離速度の遅いCryptochrome 2 (CRY2)とその結合因子CIBを光スイッチとして使用する。CRY2をミトコンドリア外膜局在ドメインと融合させ、CIBを微小管結合ドメインと融合させたコンストラクトを作製する。これらを神経細胞に発現させ、パルス照射により軸索の特定部位に長時間ミトコンドリアを停止させる。ミトコンドリア間に働くシグナルの候補としてATPおよびカルシウムイオンを想定して実験を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響もあり、旅費や消耗品の使用が計画より低かった。旅費については今後も不透明であり、次年度以降に実験を効率的に進めるため物品購入に使用する計画である。
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