2022 Fiscal Year Research-status Report
軸索内に停止型ミトコンドリアを一様に分布させる機構の解明
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20K06889
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小西 慶幸 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (00382838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軸索 / ミトコンドリア / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
軸索内に散在する停止型ミトコンドリアは、局所的に必要なATPを供給することで軸索形態の維持に重要な役割を担うと考えられる。このため、停止型ミトコンドリアの分布を調節するシステムが存在すると予想されるが、その実態は不明である。前年度までの研究結果により、軸索内のミトコンドリアの一様な分布が、ミトコンドリアが産生するATPの濃度勾配に従って制御されることが示唆された。 そこでATPの産生異常によりミトコンドリアの分布が変化するか検証を試みた。軸索全体でのATP産生の変化は、ミトコンドリアの運動性を変化させたものの、軸索全体におけるこれらの分布には大きな影響を与えなかったため、ミトコンドリアの機能の不均一性とミトコンドリアの間隔の関連を解析した。OPA1はミトコンドリア内膜の融合に必要な因子であり、その阻害は、ミトコンドリアの品質管理機構を破綻させ、神経変性疾患の原因となる。小脳顆粒細胞においてOPA1のRNAiを行うことで、サイズの小さいミトコンドリアや、膜電位を消失したミトコンドリアが増加することが確認できた。これらのミトコンドリアと隣接するミトコンドリアとの距離を解析した結果、同じ軸索の正常なミトコンドリアと比較して間隔が有意に小さいことが示された。これらのミトコンドリアが産生するATPは他のミトコンドリアと比較して少ないことが想定されるため、本研究の結果はミトコンドリアが産生するATPの濃度勾配に従って軸索内のミトコンドリアの分布が調節されるというモデルを支持する。加えて、ミトコンドリアの分布の解析から軸索内のミトコンドリアの異常を検出できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した優先順位の高い実験については順調に進み、これまに成果を論文として公表している。 ミトコンドリアの分布を制御するシグナルについて、実験項目の一部は達成されておらず、次年度継続して解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアから産生されるATPが、直接的にミトコンドリアの運動性を調節するのか、または下流のシグナル因子を空間依存的に調節することで間接的にミトコンドリアの運動性を制御するのか不明である。今後はATPにより制御を受けるシグナル経路についての解析を進める。またシナプス因子やアクチンとミトコンドリアの停止との関連が報告されており、本研究で対象とする軸索内のミトコンドリア分布との関連について解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で初年度に繰り越しが生じたため、期間延長を申請し来年度に継続し、来年度に使用する計画である。
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