2020 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成における直接/間接分化ニューロンの役割の解析
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20K06891
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畠中 由美子 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40271548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 大脳皮質 / 神経幹細胞 / 投射ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質では主として興奮性ニューロンの配置が領野や層構造といった皮質の解剖学的構造を形成している。興奮性ニューロンは発生過程において、皮質脳室帯の幹細胞から分化し放射軸方向の移動を経て目的層に到達する。この分化過程には幹細胞から直接分化するものと神経前駆細胞を介し間接的に分化する2つの様式があることが明らかにされているが、皮質構造形成におけるこれら分化様式の役割は不明である。本研究では生体内において、直接/間接分化ニューロンを区別して標識し、各領野や層構造間でこれらニューロンの構成やその細胞タイプを明らかにし、分化様式の役割を解明することを目的としている。これまでに 直接/間接分化ニューロンの割合を調べるためにNeurogenin2プロモーター下にCreERT2を発現するマウスを用いる方法を検討してきた。このマウスではニューロンへ分化方向が決まった細胞でCreERT2を発現させることが出来る。そこでタモキシフェンの少量投与により時期特異的に直接/間接分化ニューロンを標識し、さらに間接分化ニューロンは核酸類似体を取込ませることで、両者を区別する系を確立してきた。本年度はこれを用いて胎生13.5から15.5日まで半日おきに標識を行い、生後1日目に脳を回収して1次体性感覚野における標識ニューロンの層分布とCtip2発現を指標にした細胞タイプについて解析を行った。E13.5で投与すると、大部分の標識ニューロンは6層に分布する皮質外投射ニューロンとなり、間接分化ニューロンの割合は約60%であった。投与時期を遅らせるにつれ、標識ニューロンの分布は上層に移動し、皮質内投射ニューロンになるが、E14.5以降、間接分化ニューロンの割合は30%程度となった。以上の結果から、発生時期特異的に直接・間接分化ニューロンの割合は異なり層形成への寄与も異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度前半のコロナ禍において、マウスの繁殖や交配を進めることに困難があったため、必要な解析サンプルを得るために予想よりも時間がかかった。また、脳切片の解析において、高い倍率で広い面積の蛍光画像を得る必要があるが、画像取得法とデータ処理法の確立にやや時間がかかった。ただしデータ処理の点においては、年度途中より実験補助員を研究費で雇用することができ、ある程度実験の遅れを挽回することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1次体性感覚野で得られた層形成における直接/間接分化ニューロンの割合が他の領野でどうなっているのか、皮質構造が異なる運動野や隣接する2次体性感覚野でも検証を行う。また、標識ニューロンタイプについて、直接/間接分化ニューロン間でどの程度の差があるのかこれを明らかにするため、Ctip2に加え、ニューロンタイプ特異的なマーカータンパク質の発現(Tbr1やSatb2等)を調べる。これらはこれまでに得られた切片を利用して、あるいは追加でサンプルを作成し解析を行う。さらに、これら実験とは独立して、間接分化を経た娘ニューロン間の関係についての解析も開始する。このため、体細胞分裂時の相同染色体組換えを利用するMADM (mosaic analysis with double markers) 法で娘ニューロンを標識する。まず間接分化が多く見られる深層ニューロンについて解析を行うため、妊娠12または13日にタモキシフェンを投与し間接分化を経た娘ニューロンを標識する。これらについて、その投射(軸索の向きによる初期投射)や、分子発現、層分布、さらに形態について調べる。このレポーターマウスでは、標識細胞の蛍光をそのまま検出するには強度が低いため、抗GFP・抗RFP抗体で増感反応をする。またその形態について解析するために、透明化法を適用し共焦点レーザー顕微鏡等を用いて解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
年度前半はコロナ禍対応のため、新たな実験を開始することができずにいた。また試薬がこれまでの研究で保持しているものが多く使えたことなどで予想よりも少ない金額で計画を進めることが出来たため。今後は遅れを取り戻すためにマウスの飼育数を増やすことなどに予算を使い遅れを取り戻す予定である。
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Research Products
(1 results)