2020 Fiscal Year Research-status Report
サイトへジン2-Arf6小胞輸送経路を介した神経細胞の移動制御機構の解明
Project/Area Number |
20K06897
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
原 芳伸 北里大学, 医学部, 講師 (40558467)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 神経細胞移動 / サイトへジン2 / Arf6 / ApoER2 / 脳層形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、移動神経細胞における低分子量Gタンパク質Arf6の活性化制御因子として想定されたサイトへジン2に着目し、サイトへジン2-Arf6経路の活性化調節機構を解明するとともに、この経路により輸送される積荷タンパク質の全貌を解明することを目的として研究を行った。 はじめに子宮内電気穿孔法によるサイトへジン2のノックダウン実験を行った結果、サイトへジン2の機能が阻害された移動神経細胞は中間帯での移動が遅れ、また脳表層の原皮質帯への侵入が阻害された。同様の移動異常は、分泌分子リーリンのシグナル経路関連分子であるFynやDab1の機能阻害でも生じることから、サイトへジン2-Arf6経路とリーリンシグナル経路との関連性が示唆された。 次にサイトへジン2とリーリン経路の関連性について調べた。リーリンシグナル経路の亢進は原皮質帯における神経細胞の過剰移動を引き起こすことが知られている。そこで子宮内電気穿孔法によりサイトへジン2ノックダウンベクターとリーリンシグナル経路下流分子の機能亢進型変異体を共遺伝子導入し、原皮質帯における神経細胞の移動度を調べた結果、活性化型Fyn(FynY531F)による過剰移動のみがサイトへジン2ノックダウンにより抑制された。Fynはサイトへジン2のチロシン(Y)382のリン酸化を介してArf6の活性を調節することが報告されている。そこでFynによるリン酸化部位に変異を導入したサイトへジン2Y382Fを作成し、子宮内電気穿孔法によりサイトへジン2ノックダウンベクターと共遺伝子導入して機能改善実験を行った結果、サイトへジン2野生型とは異なり、サイトへジン2Y382Fでは移動異常は改善されなかった。 これらのことからリーリンシグナル経路はFynを介してサイトへジン2-Arf6経路を活性化することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は3つの解析を行う研究計画だったが、2つの項目で進捗に遅れが生じている。具体的には、サイトへジン2ノックダウンベクターとリーリンシグナル経路下流分子の機能亢進型変異体の共遺伝子導入実験により、Fynを介したリーリンシグナル経路とサイトへジン2-Arf6経路の関連性を明らかにすることができた。一方、サイトへジン2の詳細な機能解析については、固定サンプルを用いた解析からサイトへジン2が神経細胞の中間帯での移動および原皮質帯への侵入に必須であることがわかったが、タイムラプス観察により移動速度の低下を確認できたのは中間帯のみで、原皮質帯への侵入については脳軟膜および脳表層を維持した状態でのスライス作成が難しく、統計解析に十分なデータが得られなかった。また、リーリンによるサイトへジン2-Arf6経路の活性化の解析については、in vitroで安定したリーリンの精製が恒常的に行えず、サイトへジン2とFynの関連性を示唆するデータが出つつも、統計解析に十分なデータが得られなかった。これらのことからやや進捗状況に遅れが生じてきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の解析結果を踏まえ、遅れが生じてきている項目を遂行しつつ令和3年度の研究計画に沿って以下の解析を進める予定である。リーリンシグナル経路とサイトへジン2-Arf6経路の関連性については、初代培養神経細胞にサイトへジン2、Fyn、Dab1のノックダウンベクターを遺伝子導入し、リーリン処理下におけるArf6活性を下流効果分子FIP4のGST融合タンパク質を用いてプルダウン実験により定量する。サイトへジン2のノックダウンにより細胞内に貯留が認められたApoER2については、細胞内領域に対する抗体の作成を試みたが期待された抗体は出来なかった。そこで細胞内領域に蛍光タンパク質mCherryを導入した野生型ApoER2を作成したので、それをサイトへジン2ノックダウンベクターと共に初代培養神経細胞に遺伝子導入し、ビオチン化試薬を用いて膜分子全体を標識してエンドサイトーシスとリサイクリングの解析を行い、抗mCherry抗体を用いてApoER2の細胞内輸送におけるサイトへジン2-Arf6経路の作用点を明らかにする。 Arf6経路による積荷タンパク質の網羅的解析については、免疫沈降法に使用する抗体を現在作成中である。抗体の特異性が確認され次第、免疫沈降実験の条件検討を行う。
|
Causes of Carryover |
効率よく動物実験ができ妊娠マウスの購入費を節約することができたため。令和3年度のArf6活性解析用の生化学試薬購入に充当する予定である。
|