2021 Fiscal Year Research-status Report
サイトへジン2-Arf6小胞輸送経路を介した神経細胞の移動制御機構の解明
Project/Area Number |
20K06897
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
原 芳伸 北里大学, 医学部, 講師 (40558467)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経細胞移動 / サイトへジン2 / Arf6 / 細胞内小胞輸送 / 脳層形成 / リーリンシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、胎生期大脳皮質において細胞内輸送経路による神経細胞移動の制御機構の解明を最終目的として、小胞輸送制御因子である低分子量Gタンパク質Arf6とその活性制御因子であるサイトへジン2に着目し、その活性調節機構および輸送積荷タンパク質の全貌を解明することを目的としている。 本年度は、①サイトへジン2-Arf6経路により制御される小胞輸送経路の同定、および②サイトへジン2-Arf6経路とリーリンシグナル経路の関連性についての解析を行なった。 ①について、子宮内電気穿孔法によりサイトへジン2ノックダウンベクターを胎齢(E)14日の胎児大脳皮質に遺伝子導入し、3日後(E17)および5日後(P0)で固定して細胞内小胞輸送のマーカー分子の局在を調べた結果、E17の中間帯の移動神経細胞では細胞内でリサイクリング小胞の増大が見られたが、P0の皮質板上層の移動後神経細胞では初期小胞が増大する一方でリサイクリング小胞の低下が見られた。 ②について、E14胎児大脳皮質から初代培養神経細胞を作成し、播種前にサイトへジン2ノックダウンベクターおよびコントロールベクターを遺伝子導入して3日後(DIV3)でリーリンおよびコントロール上清を処理し、リーリンシグナル経路関連分子(Fyn,Dab1,Akt,Coffilin1)のリン酸化をウエスタンブロットにて、またArf6の活性を下流効果分子を使ったプルダウン法にて調べた。その結果サイトへジン2ノックダウン細胞ではFyn,Akt,Coffilin1のリン酸化が抑えられ、またArf6の活性にも低下が見られた。 これらの結果から、サイトへジン2-Arf6経路はリーリンシグナルにより活性化され、中間帯の移動神経細胞ではリサイクリング小胞-細胞膜間、一方皮質板上層の移動後神経細胞では初期小胞-リサイクリング小胞間の小胞輸送を制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、2020年度の進捗状況を踏まえ、主に3つの項目について重点的に解析を行なった。具体的には①サイトへジン2-Arf6経路により制御される小胞輸送経路の同定、および②サイトへジン2-Arf6経路とリーリンシグナル経路の関連性,③積荷タンパク質の探索である。その結果、①についてはサイトへジン2-Arf6経路が移動神経細胞ではリサイクリング小胞-細胞膜の輸送を制御していることを明らかにし、またそれが移動後神経細胞では変化する可能性があることを見出した。②についてはin vitroにおけるリーリンの精製が安定して行えるようになったため、リーリン経路とサイトへジン2-Arf6経路の関連性を示す結果が得られた。③については、組織学的解析からN-カドヘリンが積荷タンパク質の一つであることを示唆する結果を得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、以下の3つの項目に集中して実験を遂行する。①リーリン-Fyn-サイトヘジン2-Arf6経路の検証。2020年度及び2021年度の結果から、Fynがサイトへジン2の活性化分子であることが示唆された。そこで、Fynの機能解析を行う。具体的には子宮内電気穿孔法によりE14の胎児大脳皮質にFynノックダウンベクターを遺伝子導入し、E17及びP0で固定して移動神経細胞の移動度、細胞内小胞輸送の局在を調べる。また、初代培養神経細胞にFynノックダウンベクターを遺伝子導入し、DIV3でリーリンを処理してプルダウン法によりArf6の活性化度を調べる。②積荷タンパク質の探索。具体的には、抗Arf6抗体を用いて胎児大脳皮質の可溶化液から共免疫沈降により相互作用分子を単離し、質量分析により同定する。③輸送積荷タンパク質候補;N-カドヘリンの解析。組織学的解析からN-カドヘリンが輸送積荷であることが示唆された。そこで生化学的解析により検証を行う。具体的には初代培養神経細胞にサイトへジン2ノックダウンベクターを遺伝子導入し、DIV3でビオチン化試薬により標識し、アビジンカラムで生成して細胞内輸送状況をウエスタンブロットにより調べる。 これらの解析を通して、移動神経細胞においてサイトへジン2-Arf6経路の活性化調節機構およびこの経路により輸送される膜分子の全貌の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
2021年度は主にマウス胎児を使った子宮内電気穿孔法による組織学的解析と、初代培養神経細胞による生化学的解析を行なったが、想定していた実験数より少ない匹数で実験が遂行されたことにより、プラスミド精製キットや遺伝子導入キットの購入数を抑えられたことが主たる要因である。 2022年度は、2021年度と同様にマウス胎児を使った実験となるが、初代培養神経細胞を使った生化学的解析を多く予定しているため、妊娠マウス,プラスミド精製キット,初代培養神経細胞への遺伝子導入キット,ビオチン化試薬が必要となる。2021年度に生じた次年度額はそれらの購入に充当する予定である。
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