2021 Fiscal Year Research-status Report
Association of neural progenitor cells with dimentia in the human cerebral cortex
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20K06903
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
大平 耕司 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 准教授 (80402832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳新皮質 / アルツハイマー病 / 神経新生 / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、組織学的手法を用いて、ヒトの大脳新皮質に新しい神経細胞を産生することのできる神経前駆細胞であるL1-INP細胞が存在するのかどうか明らかにする。さらに、L1-INP細胞の存在を確認できたならば、アルツハイマー病患者の死後脳を用いて、L1-INP細胞数とアルツハイマー病との相関関係について調べることを目的としている。 これまでに、げっ歯類のマウスとラット、霊長類であるマーモセットとアカゲザルの健康な成熟個体において、大脳新皮質にL1-INP細胞が存在していることを見出している。さらに、昨年度、L1-INP細胞のマーカー分子に対する特異抗体を用いて、ヒトの脳組織において、L1-INP細胞が存在しているのかどうか確認したところ、健常者とアルツハイマー病患者(それぞれ2例)の脳サンプルについて大脳皮質1層に、二重陽性の細胞を確認することができた。 今年度は、例数を増加することの是非について定量化の検討をおこなった。2例ずつであるため統計解析はかけられないものの、健常者と比較して、アルツハイマー病患者の脳組織におけるL1-INP細胞の密度は低値を示した。 今後は積極的に例数を増やしていく予定である。また、アルツハイマー病では全体の神経細胞密度も低下するために、L1-INP細胞の低下と他の神経細胞の低下の程度も比較する必要がある。さらに、脳部位での差の有無、アルツハイマー病のステージとの関係性などについても検討を行なっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から引き続いて、本年度も、健常者とアルツハイマー病患者の脳サンプルについて、L1-INP細胞の検出およびその定量化をおこなった。その結果、健常者と比較して、アルツハイマー病患者脳組織で、L1-INP細胞の密度が低値を示すことを見出した(それぞれ2例のため統計解析は実施せず)。 ヒト大脳新皮質の組織中において、L1-INP細胞をはじめとする神経幹細胞や前駆細胞が発見された例は世界的にもほとんどないこと、さらにアルツハイマー病患者で密度が低くなっている可能性を示したことより、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を踏まえると、ヒト脳サンプルの数を積極的に増やすことでポジティブな知見を得られる可能性が高くなったことより、今後は、さらに脳バンクより試料提供を受けることで解析を進めていく。また、以下の点についても所見を得ていく。 1)大脳新皮質の領域ごとのL1-INP細胞の密度変化 2)アルツハイマー病のステージとL1-INP細胞の密度変化との相関性 3)他の神経細胞などの細胞種の減少率とL1-INP細胞の密度変化率との関連性 以上の解析を進めることで、アルツハイマー病の新たな病態としてのL1-INP細胞の密度変化について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、少数のヒト脳組織(健常者2例、アルツハイマー病患者2例)の解析であったために、予定額よりも少ない支出となった。次年度は、例数を増やすため、多くの消費が見込まれる抗体、組織染色キットなどの消耗品を中心に購入する予定である。
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