2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06921
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
國松 淳 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50632395)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 霊長類 / 眼球運動 / 行動選択 / 大脳基底核 / 神経生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは繰り返し同じ経験を積むことで、徐々に早く意思決定を行うことができるようになる。これは、知覚や価値判断に関わる情報処理の一部が無意識下で行われるようになるからと考えられるが、その神経メカニズムはこれまでわかっていない。そこで、本研究は意識を伴わない行動選択がどのような神経メカニズムで制御されているかを明らかにすることを目的とする。申請者は最近、サルを用いた神経生理学的検討から大脳基底核の線条体尾部の神経回路が状況依存的な物体価値の学習に関係していることを見出して論文を発表した(Kunimatsu et al., 2021, PNAS)。特に、長期間の学習に基づいて素早い潜時で自動的に物体選択を行う場合に深く関与していることから、同経路において無意識的な価値判断に関わる神経情報処理が行われている可能性を示している。 初年度である本年度は、ヒト心理実験およびサル神経生理学実験設備の整備を進めてきた。また、無意識下での物体選択課題を用いた研究に関しては、1頭のサルに対して外科的手術とモンキーチェアに自発的に座るといった初期的な訓練を終了させ、行動課題の訓練を進めている。それと並行して、サルの行動データの解析を行い、無意識での選択がより明確に判断できるように、また動物がストレスなく遂行できるように課題を洗練させ完成度を高めている。訓練が終了し次第、大脳基底核からの神経活動記録を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の開始1年目である令和2年度は、眼球運動測定装置や刺激提示システムなど、研究遂行に必要な実験設備の整備を行うことができた。更に、動物への外科的手術や初期訓練を終了させ、行動課題の訓練を進めている。試行錯誤を繰り返す中で、行動課題の細かなパラメータの決定に必要な行動データが徐々に集まってきている。また、多チャンネル電極を用いた複数神経細胞の同時記録に関しても予備的なデータ取得に成功しており、サルへの課題訓練が終了し次第、迅速に神経活動記録を始める準備ができている。以上のことから、初年度の計画目標を十分に達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
サルの無意識下の意思決定に関する神経生理実験は,継続してサルの訓練を行う。現在課題の訓練を行っているサル1頭は、課題のパラメータを決定したうえで、一定の正解率で課題を遂行できるようになり次第、速やかに神経生理実験を行う。大脳基底核の一部である線条体から単一神経活動を記録し、受容野内に提示された刺激に対する反応を分析する。その刺激に基づいた判断が、無意識下で行われたかどうかをサルの行動から判断し、無意識下で行われた場合と意識下で行われた場合の神経活動を比較する。課題に関連する脳部位が同定され次第、多点電極記録・多層解析を行い、局所回路における情報の統合過程を詳細に明らかにする。また、2頭目の動物が10月に搬入される予定になっており、検疫等が終了して使用できるようになり次第、初期訓練を開始する。令和3年度中に行動課題の訓練を終えられるように実験を進める。1頭目の動物から十分な神経活動データが取得でき次第、記録を行った部位に、ドーパミン受容体関連薬やGABA作動薬を微量注入し、行動と記録された神経活動の因果関係を調査する。申請者は並行して行っている研究において、化学遺伝学的手法を用いた神経活動操作を開始しており、これを利用した実験も視野にいれ研究を継続する。同課題におけるサルとヒトの違いを直接的に比較するために、同様の手続きでヒトを対象とした実験も行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により学会が中止またはオンライン開催となり、当初予定していた旅費等の支出がなくなったため。翌年度分とした予算で、オンラインで学会発表を行うための機器を購入する。
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