2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K06921
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
國松 淳 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50632395)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 霊長類 / 眼球運動 / 社会行動 / 大脳基底核 / 意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、無意識下における行動選択の神経メカニズムを明らかにすることを目的とした。計画当初に用いることを予定していた行動課題では、無意識下における意思決定中の神経活動を同定するのが難しく、現在も試行錯誤を重ねている。そのためここでは、本研究課題の一部として行った、無意識的に親しい人物の顔を認知するメカニズムについての研究概要を報告する。本研究で標的としている大脳基底核尾側経路の一部(線条体尾部)は、長期記憶に基づく物体価値を符号化し、素早い物体の検出に関与している(Kunimatsu et al, 2019)。同部は顔の情報を持つ側頭葉の特定の領域(TE、TEO)から強い投射を受けており、物体の認知だけではなく、顔の認知にも関わっている可能性がある。これを調べるために、三か月以上日常的に被験サルの世話をしている人物と、会ったことのない人物の顔画像をニホンザルに提示し、その時の線条体尾部の単一神経の神経活動を記録した。線条体尾部から68個の視覚応答ニューロンを記録したところ、30個(45%)が顔の画像に有意な反応を示した。また、社会的に馴染みのある顔の画像に対する反応は馴染みのない顔の画像に対する反応よりも大きかった。次に、顔に反応するこれらのニューロンが長期的な報酬体験に基づいた物体価値を表現するかどうかを検証したところ、これらのニューロンが物体価値も表現していた。これらの結果は、親しい人の顔と物体価値が共通の神経機構によって符号化されていることを示している。線条体尾部が、現実の生活における身近な顔の無意識的な認知に寄与していると考えられる。
|