2021 Fiscal Year Research-status Report
排卵や卵胞成熟を引き起こすGnRHニューロンの周期的活動のメカニズムの解明
Project/Area Number |
20K06924
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡部 美穂 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10399321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生殖 / GnRHニューロン / GABA / 視床下部 / KCC2 |
Outline of Annual Research Achievements |
性周期を制御している生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンは視床下部に散在するにもかかわらず、排卵や卵胞成熟を引き起こすGnRHの大量分泌やパルス状分泌を起こすメカニズムはわかっていない。多数のGnRHニューロン間で周期的に活動が同期することがGnRH分泌様式の基盤となる可能性を考え、GnRHニューロンの活動の指標として自発的なカルシウムの上昇の記録を行い、解析を進めている。GnRHニューロンより自発的なカルシウムの上昇を記録するために、GnRHニューロンでtTA(テトラサイクリン制御性トランス活性化因子)を発現するGnRH-tTAマウスとβアクチン遺伝子の下流にtetO-GCaMP6fがノックインされているtetO-GCaMP6fマウスを交配させ、GnRH-tTA::tetO-GCaMP6fマウスの作成し、このマウスではドキシサイクリン投与中止で、GnRHニューロンでカルシウムセンサーであるGCaMP6fが発現されることを免疫染色法により確認できた。しかしながら、急性脳スライス標本では、GCaMP6fの発現が弱かったため、GnRHニューロンでDNA組換え酵素Creを発現するマウス(GnRH Creマウス)を使用し、Cre依存性にGCaMP6fを発現するAAVを生後0日のGnRH Creマウスの側脳室にインジェクション、また、成体のGnRH Creマウスの視床下部にインジェクションすることで、GnRHニューロンでGCaMP6fを発現させた。このマウスより視床下部の急性脳スライス標本を作成し、GnRHニューロンより自発的なカルシウムの上昇を記録し、その同期性の性成熟および性周期に伴う変化についてMatlabを用いて解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はGnRHニューロンの活動の指標として自発的なカルシウムの上昇を記録するために、GnRH CreマウスにCre依存性にGCaMP6fを発現するAAVをインジェクションすることにより、GnRHニューロンでGCaMP6fを発現させることができた。このマウスの視床下部の急性スライス標本を作成し、二光子励起顕微鏡を用いて、GnRHニューロンより自発的なカルシウムの上昇を記録することができた。GnRHニューロンの自発的なカルシウムの上昇の頻度、GnRHニューロン間の活動の同期性、同期性とGnRHニューロンの位置との関連について、Matlabを用いて解析を行い、性成熟、性周期に伴う変化について検討を進めている。また、栄養状態の低下により生殖機能が低下した時に、GnRHニューロンでのカルシウムの上昇およびその同期性に変化がみられるか検討するために、通常の60%量の餌を10日間与える食事制限ストレスの方法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
GnRHニューロンでGCaMP6fを発現するマウスに60%食事制限ストレス(通常の60%量の餌を10日間与える)を負荷し、視床下部スライス標本を作成し、栄養状態の低下により、GnRHニューロンで自発的なカルシウムの上昇およびその同期性に変化がみられるかカルシウムイメージング法により調べる。栄養状態の低下によりGnRHニューロンへのGABA入力が興奮性から抑制性に変化するか、パッチクランプ法により検討する。GnRHニューロンの同期活動における興奮性GABA入力の役割を検討するために、GnRHニューロンでGCaMP6fとGABA作用を抑制性に維持するKCC2を発現させた遺伝子改変マウス(GnRH-tTA::tetO-GCaMP6f::KCC2-tetOマウス)の視床下部スライス標本を作成し、GnRHニューロンへのGABA入力を興奮性から抑制性に変化させた時、GnRHニューロンの活動やその同期性に変化がみられるか調べる。さらに、GnRHニューロンでGCaMP6fを発現するマウスの頭蓋骨に穴をあけ、Gradient refractive index(GRIN)レンズを埋め込み固定し、マウス視床下部のGnRHニューロンからin vivo カルシウムイメージングを行い、GnRH大量分泌やパルス状分泌時のGnRHニューロンの活動のパターンを解析し、同期活動を示すGnRHニューロンの割合を調べる。
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Causes of Carryover |
実験に遺伝子改変マウスを使用しているが、繁殖がうまくいかない時期があり、マウスの飼料代やジェノタイピングに関する試薬費が次年度使用となった。次年度のマウスの飼料やジェノタイピングに関する試薬の購入に使用する計画である。
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