2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional role of the basal ganglia and cerebellum in controlling voluntary movements
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20K06933
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
知見 聡美 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30396262)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / 小脳 / 視床 / 運動制御 / パーキンソン病 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核と小脳はどちらも、随意運動の発現と制御において重要な役割を果たし、障害されると運動障害が生じることが知られている。また、どちらも大脳皮質から入力を受け情報処理の後、視床を介して情報を戻すことにより、大脳皮質の活動調節に寄与している。本年度は、ヒトに近いモデル動物であるニホンザルにおいてパーキンソン病モデルを作製し、大脳基底核および小脳の神経活動を記録して、正常サルとの比較を行った。 パーキンソン病サルの大脳基底核出力部では、神経細胞の自発発火頻度に変化は見られなかったが、バースト発火を含む異常な活動様式が観察された。また、大脳皮質の電気刺激に対する応答を調べてみると、正常サルでは、早い興奮-抑制-遅い興奮の3相性応答が観察されるが、パーキンソン病サルでは、抑制が著しく減弱していた。大脳基底核出力部の神経細胞は抑制性であり、連続的に高頻度で発火しており、持続的に視床の活動を抑制しているが、大脳基底核の直接路を介する入力によって一時的に活動が抑制されると、脱抑制によって視床と大脳皮質が興奮し、目的の運動が生じると考えられている。しかしながらパーキンソン病では、直接路を介する大脳皮質由来の抑制が減弱していることから、視床と大脳皮質を十分に脱抑制することができず、スムーズな運動ができなくなっていると考えられる。 また、パーキンソン病サルにおいて小脳出力部の神経細胞の活動を記録したところ、バースト発火や周期的発火などの異常な発火様式が観察され、さらに、大脳皮質由来の興奮性応答の増強も観察された。この結果から、パーキンソン病では、大脳基底核に加えて小脳の活動にも異常が生じており、パーキンソン病症状の発現に関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳基底核から視床への出力の異常が、パーキンソン病症状の発現に寄与するメカニズムを明らかにすることができた。また、パーキンソン病では、大脳基底核だけでなく、小脳から視床への神経伝達出力にも異常が生じており、症状の発現に関与している可能性も示すことができたため、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はパーキンソン病モデルサルにおいて、大脳基底核のみならず、小脳から視床への情報伝達にも異常が生じていることがわかった。今後、光遺伝学的手法を用いて、特定神経経路の情報伝達をブロックし、小脳から視床への入力に異常が生じるメカニズムを明らかにする。 また、正常な運動制御における大脳基底核-視床投射、および、小脳-視床投射の機能の解析が遅れているため、研究期間中に成果が出せるよう、こちらにも力を入れて実験を進める。
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Causes of Carryover |
予定していたモンキーチェアの購入を見合わせ、使用していたものに改良を加えて使用した。一方、電極材料購入費用が当初の予定を大きく上回った。来年度も同様だと予想されるため、次年度使用額を電極材料購入費に充てたい。
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Research Products
(10 results)