2020 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of versatile asymmetric Nazarov cyclization with novel biphenol-boric acid catalyst system
Project/Area Number |
20K06937
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉本 健士 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (60400264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナザロフ環化 / 不斉触媒反応 / 光学活性ビフェノール / ホウ酸 / シクロペンテノン |
Outline of Annual Research Achievements |
ナザロフ環化反応は、ジビニルケトンの4π-電子環状反応によってシクロペンテノンを得る方法として、その発見より半世紀以上が経過する現在でも活発に研究が進められており、基質制御による反応促進には端緒が見出されている。その一方で、活性化剤制御による不斉反応には、強力であるものの空気中での不安定性から取り扱いに難のある酸試薬が用いられているため、汎用性の面では課題が残されている。そこで、本研究では、従来試薬の「使いにくさ」を払拭する温和な不斉ナザロフ環化反応の樹立を目的として、申請者が最近開発したビフェノール/ホウ酸触媒系のさらなる発展・展開を目指すこととした。 市販されている光学活性ビフェノールや、自ら合成した光学活性ビフェノールをホウ酸と加熱下混合して申請者の反応系に適用したところ、中程度の不斉誘起を実現する光学活性ビフェノール誘導体を見出し、60%ee程度のシクロペンテノンを得ることに成功した。この間の詳細については、薬学会第141年会にて発表している。 またビフェノール/ホウ酸触媒系の新たな用途を探索した結果、ナザロフ環化以外にも従来強酸を必要とする複数の酸触媒反応に適用可能であることを発見し、収率良く目的とする生成物を与えることを確認している(未発表であるため具体的な反応名は伏せる)。現在、新たに2名の学生を配置して、これらの反応条件の最適化と不斉反応への展開について検討を進めているところであり、得られた成果については、今後学会等で発表を行う予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献に従って既知の光学活性ビフェノールの合成と、その誘導化を行い、数種の光学活性ビフェノールとホウ酸を組み合わせた不斉反応を試みた。その結果、中程度の不斉誘起を可能とするビフェノール誘導体を発見することができた。検討を進めていくうち、ビフェノール誘導体の不斉誘起能とビフェノールの二面角との間に関連性があることを見出し、不斉誘起に有効と思われるビフェノールの二面角を推定できた。その短工程合成法についても目処が立っている。 また、不斉反応の探索と並行して、温和な酸の組み合わせであるビフェノール/ホウ酸触媒系の適用範囲についても検討を進めた結果、新たに二種の酸触媒反応に有効であることを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
不斉誘起に有効な二面角をもつと予想されるビフェノール誘導体に焦点を絞って、それらの合成と実際の不斉反応への適用とについて検討を進める。不斉反応の確立ののち、生物活性天然物の不斉全合成へと応用する。また、新たに見出したビフェノール/ホウ酸触媒系の用途についても更なる検討を進め、調製した光学活性ビフェノールとの組み合わせを適用して、不斉反応への展開が可能かどうか研究範囲を広げる予定としている。
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