2022 Fiscal Year Annual Research Report
オルト位に極小置換基を有する炭素-窒素軸不斉化合物の創製
Project/Area Number |
20K06945
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
北川 理 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30214787)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 軸不斉 / アトロプ異性 / 重水素 / フッ素 / キナゾリノン / アニリン |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はオルト位に極小置換基を有する炭素-窒素軸不斉化合物(N-C軸不斉化合物)として,3位窒素原子上にオルト-トリル基やオルト-フルオロフェニル基を有するN-C軸不斉キナゾリノン誘導体の合成と構造特性について検討した.すなわち,3-(2-フルオロフェニル)キナゾリン-4-チオン誘導体が安定なアトロプ異性構造を有することを見い出し,結晶中での会合様式も明らかとした.この途上,比較のために3-(2-クロロおよび2-ブロモフェニル)キナゾリン-4-チオン誘導体も合成し会合状態を精査したところ,2-クロロ体と2-ブロモ体において,類例のないキラリティー依存型ハロゲン結合を検出した(ラセミ体と光学的に純粋なキナゾリンチオンでは異なる様式のハロゲン結合が生じていることを見い出した).さらに,3-(2-トリル)キナゾリン-4-オン関連の研究では,3-(2-CD3-6-メチルフェニル)キナゾリン-4-オンの両エナンチオマーの不斉合成に成功した.同化合物はオルト位CD3/CH3識別に基づく同位体アトロプ異性体であり,微小ながら旋光性を有することも明らかにした.本研究は安定な同位体アトロプ異性を検出した初めての例となる. また,窒素原子上に種々の5-置換-2-ピリミジル基を有するオルト-メトキシメチルアニリンの合成を行ないN-C軸の安定性を調べたところ,ピリミジン環上の5位置換基の電子効果と二つのN-Ar結合の回転障壁の間に明確な相関関係が認められた(5位置換基の電子吸引性が増加するほど二つのN-Ar結合の回転障壁が向上した). 以上3年間の研究を通して,オルト位に重水素原子,フッ素原子,塩素原子,メチル基等小さな置換基を有するN-Ar型N-C軸不斉化合物の合成に成功し,不斉軸の安定性や構造特性を明らかにした.
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Remarks |
英文プレスリリース
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