2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel cascade reactions for polysubstituted polycyclic aromatics
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20K06947
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
矢内 光 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (10408685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 連続反応 / 多環式芳香族炭化水素 / 複素環式芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界には魅力的な生物活性を示す天然有機化合物が広く分布している。中でも,アリールナフタレン型リグナンや種々の芳香族ポリケチド類といった天然物は,複数の芳香環が縮環した多環式骨格上に,多様な置換基が位置を定めて配置されており,生物活性に対する興味と共に,有機合成の観点からも注目されている。一般に,多置換芳香族化合物の合成では,個々の置換基の位置化学を如何に確保するかが問題となる。定法とでもいうべき芳香族求電子置換反応の組み合わせでは,反応自体が立体障害の影響を受けやすく,構造異性体の混合物が得られたり,望む異性体が全く得られなかったりするなど,解決困難な問題に直面することも珍しくない。さらに,多環式骨格そのものの構築も容易とはいえない。こうした背景を踏まえ,新たな多置換芳香族化合物の選択的な合成戦略を確立すべく,ラクトールシリルエーテル類を出発原料とする多様な連続反応の開発を進めた。 本研究期間では,前年度の中心的な検討課題であった4-アリール-1,2-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸エステルの選択的な合成法に関する研究を完成させ,論文発表を行った。また,アルケニルラクトールシリルエーテルやフッ素置換ラクトールシリルエーテルの反応では,予想した反応が進行することを確認することができ,反応の基質適用範囲に関する研究を進めた。同時に,イソインドール骨格などの合成が比較的難しい含窒素複素環骨格の構築においても「環の巻きかえ」戦略が有効に利用できることを見いだし,更なる連続反応のバリエーションの拡大に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,具体的な例として想定していた三つの連続反応の内,ブロモラクトールシリルエーテルからの連続反応については研究を終了することができた。また,本研究の着想段階では想定していなかった,イソインドール生成反応ても論文発表の準備段階にある。残る反応についても反応自体の進行が確認されており,基質適用範囲の確認と官能基許容性等の検討へと進むことができている。さらに,新たな連続反応の進行も見いだしている。以上の成果から,本研究の中心的な内容である「環の巻きかえ」戦略が,合成しにくい多置換・多環式芳香族化合物の選択的な合成に資するものであることを明確に示すことができており,研究は順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初,想定していた三つの連続反応の完成を目指し,基質適用範囲の検討と反応機構の解析を進めていく。また,諸連続反応の開発に伴って,他法では得がたいユニークな多置換・多環式芳香族化合物の入手に成功していることから,それらの物性やπ拡張分子への誘導もあわせて検討していく。多置換構造であるがゆえの新たな分子機能の実現を果たしたい。新規イソインドール合成反応に関しても,生成物の平易な誘導によってdrug-likeな含窒素複素環骨格を構築できることから,新たな複素環合成法としての有用性を追究していく。
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Research Products
(10 results)