2021 Fiscal Year Research-status Report
ベンザインの位置選択的連続型環化反応を機軸とする生物活性アクリドンの合成研究
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20K06950
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Research Institution | 湘南医療大学 |
Principal Investigator |
片川 和明 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 准教授 (90433606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 仁司 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (10594640)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベンザイン / アクリドン / クロロスペルミン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、クロロスペルミン合成に必要となるベンザイン前駆体の合成について検討を行った。フロログルシノールをモノメチルエーテルへと誘導し、3-メチル-2-ブテナールとの縮合により5位にフェノール性水酸基、7位にメトキシ基を持つクロメン誘導体 (以下、化合物Ⅰ) を主生成物として得た。このものの臭素化はフェノール性水酸基のオルト位 (クロメン骨格の6位) 選択的に進行すると予想し、反応を試みたが、意外にも複雑な混合物を与えた。生成物を精査した結果、目的の臭素体は12%と低収率であり、フェノール性水酸基のパラ位 (クロメン骨格の8位) で臭素化が進行した化合物が主生成物 (37%) であった。これらに加え、ジブロモ体も17%の収率で得られた。化合物Ⅰの直接的な臭素化では望みの臭素体を得ることが困難であったことから、配向基を用いた検討を行った。化合物Ⅰをイソプロピルカルバマートとし、常法によりオルトリチオ化、ジブロモエタンによる臭素化を行ったところ、目的の臭素体が23%の収率で得られた。本臭素化に関しては反応温度や試薬の純度、種類などの条件検討を種々行ったが、収率向上には至らなかった。収率には改善を要するものの、所望の臭素体が得られたことから、ベンザイン前駆体への変換を試みた。まずカルバモイル基を除去し、生じたフェノール性水酸基をTMS基で保護した。次いでハロゲンリチウム交換を行い、自発的なレトロブルック転位により生じたフェノキシドをTMSエーテルへと変換することで、先の臭素体から3工程、総収率66%で所望のベンザイン前駆体の合成を達成した。以上のように、現在の合成経路では位置選択的な臭素化が課題となっており、本工程の収率改善が急務である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの研究により、種々の小さな課題は残っているものの、当初の課題であった未環化体 (ジアリールアミン誘導体) 生成の抑制については一定の知見を得ることができている。本年度はフロー合成によるさらなる選択性向上を試みる予定であったが、主として2つの点からこの検討は見送らねばならない状況であった。まず1点目として、コロナ禍の影響により、研究棟の竣工が大幅に遅れ、学内の研究設備の一部を利用できたのが2021年末にずれ込んだ点である。また2点目として現所属の物品購入ルールの関係上、グループの会社に発注をせねばならず、定価の20%ほども高い価格を提案されたことから、フロー合成に用いる装置の購入を見送らざるを得なかったことがあげられる。科研費を含めた外部資金の執行ルールの見直しを訴えてはいるものの、現在までに大きな改善は見られていない。代替装置の検討を進めるとともに、研究費が適切かつ研究者の希望に沿う形で執行できる体制作りを引き続き要求していく。このように本年度も困難の多い1年ではあったが、クロロスペルミンの合成に用いるベンザイン前駆体の合成については、中間体の合成において収率改善が必要な箇所があるものの、その合成を達成することができた。これにより、クロロスペルミンより単純な構造を持つ天然由来アクリドンであるアクロナイシンとその誘導体の合成に必要な合成素子はそろったことから、これらの合成に向けた検討が可能な状況となった。アクロナイシン類の合成が達成できれば、これらを足掛かりとして、クロロスペルミン類の合成へと展開できるものと考えている。全体を通して、ほぼ1年遅れの状況となってはいるものの、軌道に乗ってきたと考えており、2023年度はいくつかの天然物合成を達成できるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画と照合すると1年程度の遅れが生じているものの、全体的には計画通りに進行していると思われ、計画自体の変更は必要ないと考えている。当初はフロー合成による選択性、および収率の向上を目指していたが、反応時間のコントロールによりこれらの相当な改善がみられている。したがってフロー合成を試みるよりも、基質一般性の確認が急務であると考えている。ベンザイン前駆体についてはある程度の基質が利用可能な状況となっていることから、今後はアントラニル酸部分についての検討を重点的に行っていく。また天然物合成に供するクロメン骨格を持つベンザイン前駆体の合成については、臭素化の工程のみが低収率となっており、大量供給の観点からは早急に改善を要する。臭素置換基はケイ素置換基へと変換する足掛かりであり、今後は臭素化を回避するような新たな合成経路を立案し、合成を試みる予定である。クロメン骨格を持つベンザイン前駆体の合成を検討しつつ、アクロナイシン類、さらにはクロロスペルミン類の合成へと展開し、合わせて生物活性評価を行っていく。研究環境および物品発注の改善についても、現所属に継続して訴え、効率的な研究費の執行環境の整備に努めていく。
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Causes of Carryover |
主としてコロナ禍と所属先の変更に伴い、研究環境が大きく変わり、計画通りに研究費を執行するのが困難な状況となっていた。しかしながら、現在は実験室や大型機器等の研究環境は整いつつあり、計画に沿った研究費の執行ができる状況となりつつある。これに加え、現所属研究室は立ち上げの最中にあり、研究室で不足している器具類も多いことから、今年度以降はこれまでに使用してこなかった研究費を積極的に活用し、研究基盤の整備を行う計画である。
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Research Products
(1 results)