2022 Fiscal Year Research-status Report
ベンザインの位置選択的連続型環化反応を機軸とする生物活性アクリドンの合成研究
Project/Area Number |
20K06950
|
Research Institution | 湘南医療大学 |
Principal Investigator |
片川 和明 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 准教授 (90433606)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 仁司 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (10594640)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ベンザイン / アクリドン / クロロスペルミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、クロロスペルミン合成に必要となるベンザイン前駆体の合成について検討を行った。昨年度の検討では、目的のベンザイン前駆体の合成自体は達成できたものの、その合成の過程で収率の改善が必要な工程が含まれていた。この合成経路を見直すと、シリル基に変換するための臭素置換基の導入と、その臭素化位置を規定するための配向基の導入といった工程を含んでおり、特に前者が全体収率の低下を招いていた。そこでシリル基のレトロブルック転位による位置制御により上記工程を省略すべく、新規に合成経路を立案して検討を行うことにした。まず、市販の3,5-ジメトキシフェノールをモデル基質として、HMDSによるO-シリル化、LDAによるリチエーションと自発的レトロブルック転位、フェノキシドのTMS化を行ったところ、3工程2ポット、総収率69%にてベンザイン前駆体の合成が達成できた。次に、天然物合成に用いるベンザイン前駆体の合成を検討した。5位にフェノール性水酸基、7位にメトキシ基を持つクロメン誘導体 (化合物I) を調製し、同様の変換を試みた。その結果、3工程2ポット、総収率44%にて所望のベンザイン前駆体の合成が達成できた。なお、本変換では8位のC-シリル体が副生することが懸念されたが、そのような化合物は全く得られず、30%程度の原料 (化合物I) と、中間体である化合物IのO-TMS体といったリサイクル可能な化合物が回収された。以上のように、ベンザイン前駆体の合成において、大幅な短行程化と収率向上を達成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究により、天然物の合成に必要となる二つのユニット (ベンザイン前駆体とアントラニル酸誘導体) をそろえることができた。特に、ベンザイン前駆体の短工程かつ高収率な供給経路を確立できたことは大きいと考えている。これにより、比較的単純な構造を持つ天然由来アクリドンアルカロイドであるアクロナイシンやその誘導体の合成に向けての検討が可能となった。今後はアクロナイシン類の合成に関する検討を進め、アクロナイシンを足掛かりとしたクロロスペルミン類の合成へと展開していく。全体として遅れてはいるものの、確実に前進していると自己評価している。一方で、研究機関における物品発注ルールや納入価格については改善が見られず、議論も行われないのが実情である。そればかりか、十分な議論もなく裁量労働制が廃止され、シフト制へ移行したが超過勤務手当は支払われず、研究室への滞在可能時間も他大学と比較すると短く制限されており、大学教員が研究者として認められているとは言えない状況となっている。大学教員が研究を遂行できる環境づくりは研究組織の責務であり、研究環境の改善をより一層訴えて行きたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画と照合すると1年程度の遅れが生じているものの、全体的には計画通りに進行していると思われ、計画自体の変更は必要ないと考えている。これまでの検討において、天然物合成へと展開するための各合成素子については準備ができたことから、まずはアクロナイシン類の合成を検討し、これらの知見を踏まえてクロロスペルミン類の合成へと展開する予定である。一方、基質一般性についての検討は未だ十分とは言える状況ではない。至急、基質を精査し、これらの合成と基質一般性の検討を進めて行く。合わせて研究環境および物品発注の改善についても、継続して現所属に訴え、より良く効率的な研究環境整備に努めていく。
|
Causes of Carryover |
初年度、2年目のコロナ禍の影響により研究がほぼ1年遅れとなっていることが、主たる要因である。令和3年度に計画した研究を速やかに進行させ、令和4年度に計画した研究へと移行させる。なお、今年度の使用経費は必要な試薬や器具の購入費用として、必要時に都度執行する予定である。
|
Research Products
(2 results)