2021 Fiscal Year Research-status Report
KSP阻害システイン誘導体の抗がん作用を活かす新規抗体薬物複合体の開発
Project/Area Number |
20K06969
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小郷 尚久 静岡県立大学, 薬学研究院, 講師 (20501307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抗体薬物複合体 / in silico / プロドラッグ / 細胞増殖阻害 / cleavableリンカー / non-cleavableリンカー / システイン誘導体 / KSP |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体薬物複合体 (antibody-drug conjugate, ADC) は抗体にリンカーを介してペイロードと呼ばれる低分子化合物を結合させた抗体医薬品であり、抗体の抗原特異性と低分子化合物の細胞毒性によってがん細胞を選択的に攻撃できる次世代抗体医薬品である。本研究では独自に創製したキネシンモータータンパク質KSP阻害システイン誘導体のがんへの選択的なデリバリーと新たなADC開発を目的に①新規リンカーペイロードの化学合成によるライブラリー構築と②その複合化によるADC創出を行う。令和2-3年度は、ドッキングソフトMOEを活用した誘導体のKSP阻害ファーマコフォア解析と構造活性相関研究を実施し、アミノ基修飾にてKSP阻害活性のマスキングとがん細胞で高発現している酵素γ-glutamyltransferaseにより選択的に殺細胞活性を示すプロドラッグ化に成功した。また新たなペイロードとしてシステイン誘導体(1a)のS→C置換体(1a-C)と脱カルボキシ体(2)合成を試み、がん細胞株(SKOV-3)に対するGI50値1a:13 nMに対し1a-C:8.5, 2:0.66 nMと細胞増殖阻害活性向上を達成した。リンカーペイロードについては、システイン誘導体カルボキシ基を起点としてアミド化によりPEGリンカーを持つ末端マレイミド基のLP1、カルボキシ基のLP1-Cを、アミノ基からは酵素により切断されるペプチドリンカー(Val-Cit-PABC)を導入したLP2a, LP2bを合成した。LC-MSにてLP1はシステインと反応、LP2bはカテプシンB添加による1a生成を確認できている。更にTrastuzumabと複合化したTrastuzumab-LP1はTrastuzumabと比べ有意に細胞増殖阻害することも判明し、今後ADCとしての分析や他の抗体との複合化と生物活性評価を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、まずMDシミュレーションをはじめとしたin silico計算を活用した新たなペイロード創製を試みた。令和2年度までに得ていた構造活性相関情報を基に、システイン誘導体(1a)のS→C置換体(1a-C)と脱カルボキシ体(2)をデザインした。1a-C は1a中間体であるトリチルアルコールにXtalFluor-EとAllyl-TMSを用いAllyl導入体とした後、ヒドロホウ素化、酸化により得たアルデヒド体からStrecker法により合成することができた。ヒト卵巣がん細胞株(SKOV-3)に対するGI50値は1a:13 nMに対し1a-C:8.5, 2:0.66 nMと細胞増殖阻害活性の向上を確認できた。リンカーペイロードライブラリー構築については、システイン誘導体カルボキシ基を起点としてアミド化によりPEGリンカーを持つ末端マレイミド基のLP1、カルボキシ基のLP1-Cを合成した。アミノ基からはADCが細胞内に取り込まれた後で酵素により認識・開裂するようなペプチドリンカー(Val-Cit-PABC)を導入したLP2a, LP2bを合成した。LC-MS解析により、LP1はPBS中のシステインと反応、LP2bはカテプシンBにより親化合物1aが生成することを確認できている。更にTrastuzumabと複合化したTrastuzumab-LP1はTrastuzumabと比べ有意に細胞増殖阻害することも判明している。ADCに適応できる新たなペイロード開発を目的としてシステイン誘導体1aをリード化合物とした種々のリンカーペイロードの設計と合成は順調であり、当初予定していた研究項目は概ね着手することができており、全体的に計画通りに進捗を達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、システイン誘導体を有するリンカーペイロードライブラリーの構築と抗体への複合化、続くADCとしての生物活性評価を継続する。新たに令和3年度に見出したペイロードを含め開裂・非開裂リンカーを持つ多様なリンカーペイロードライブラリーを構築する。特に酵素による開裂リンカーに関してはペイロードの物性が重要である知見を得ており(LP2a vs. LP2b)、新規なリンカーをデザインし合成したいと考えている。その後、抗体への複合化を予定しているが、Trastuzumab-LP1, -LP2についてはADCとしてのDAR算出をはじめとした種々の分析と生物活性評価を進める。現在評価しているヒト卵巣がん細胞株SKOV-3のHER2発現は確認できているものの、発現量の違いによるADCの薬効について、他の細胞株やsiRNAを使用して評価検証していく。また他の抗体への複合化を検討し、ADCに適応できる新たなリンカーペイロード開発を目指す。これらの研究によりがん細胞を特異的に認識する新規システイン誘導体の可能を追求していく。
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Research Products
(6 results)