2021 Fiscal Year Research-status Report
Usefulness of time-domain NMR as a monitoring tool for pharmaceutical process analytical technology
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20K06986
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大貫 義則 富山大学, 薬学部, 客員教授 (10350224)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間領域NMR / プロセス分析技術 / 製剤物性 / NMR緩和 / 水分量定量 / PLS回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間領域NMR(time domain NMR, TD-NMR)とはNMR緩和測定に特化した低分解能(20MHz)の卓上型NMR装置である。NMR緩和は化合物の分子状態を強く反映することが知られ、また、TD-NMRではそうしたNMR緩和挙動の測定が、固体・液体に関わらず様々な試料で短時間かつ非破壊的に実施できる。このため、本手法は新たな製剤物性評価技術として非常に有望である。そこで本課題では、医薬品の実生産で運用されるプロセス分析技術(PAT)への適用も視野に入れつつ、TD-NMRの製剤物性評価技術としての有用性を明らかにしていく。なお、本研究課題は、次の3つの事例研究によって構成される。『①混合工程における混合粉末の均一性評価』、『②湿式造粒工程における顆粒中の水分量定量と水分子運動性評価』、『③最終製品(錠剤)における薬物の結晶状態評価』。2年目となる本年の検討では、主に『②湿式造粒工程における顆粒中の水分量定量と水分子運動性評価』に従事した。まず様々な崩壊剤粉末に既知量の水分を添加した湿潤粉末を試料とした。過去の検討で、異なる崩壊剤に水分を配合した場合、湿潤顆粒中の水の分子状態が崩壊剤の種類によって大きく変化することを明らかにしており、このことから複数の崩壊剤を評価することとした。水分量を変化させるとTD-NMRのT2緩和挙動が変化した。さらに、その変化挙動を多変量解析手法であるPLS回帰で解析することで、湿潤粉末中の水分量を定量的に評価できることを明らかにした。さらに、アセトアミノフェンをモデル薬物として配合した造粒末においても同様の結果が得られた。これらの結果から、TD-NMR法は湿式造粒工程における湿潤顆粒中の水分量の定量的評価においても有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当課題の目的は、時間領域NMR(time domain NMR, TD-NMR)を適用し、PATを志向した新たな製剤物性評価技術を構築することである。この課題を達成するため、本課題では錠剤の製造工程において、PATによるリアルタイムモニタリングの重要性が認識され、かつ、TD-NMRの特徴を最大限に生かせる3つの事例研究を実施するような計画を立てている。初年度の検討では、『①混合工程における混合粉末の均一性評価』に取り組み、期待した成果を得た。2年目となる本年も概ね期待通りの結果を得ている。具体的には、既知量の水分を配合した医薬品添加剤(崩壊剤)粉末または湿式造粒法で造粒した湿潤顆粒を試料とした。そして、それら試料のT2緩和時間測定をTD-NMRによって行い、得られたデータをPLS回帰によって解析することで試料中の水分量を定量的に評価することとした。検討の結果、T2緩和挙動を評価することで、試料中の水分量を高精度に定量できることが明らかになった。なお、試料粉末の組成を変えると湿潤顆粒中の水の分子状態は大きく変化するが、そのように水の分子状態が異なっていても本定量的手法は適用できることが明らかになった。以上の結果から、TD-NMR手法を活用した湿潤顆粒中の水分量の新たな定量技術を構築することに成功した。なお、本手法は短時間かつ非破壊的な試料測定が可能であるため、PATへの適用も有望である。したがって、研究は概ね順調に進んでいる。次年度は、計画通り、申請書の研究計画に記載した『③最終製品(錠剤)における薬物の結晶状態評価』について検討を実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、本申請課題は計画通り順調に進んでいるため、今後も引き続き申請書の研究計画に沿って研究を進めていく。次年度は『③最終製品(錠剤)における薬物の結晶状態評価』を実施予定である。本研究は1年目と2年目に得られた知見をもとに詳細に進めていく。すなわち1年目の検討でTD-NMRのNMR緩和測定によって結晶形と非晶質といった薬物の結晶状態を明確に区別できることを明らかにしている。3年目の検討では、薬物単体ではなく、様々な添加剤が配合された錠剤を試料とする。製剤の構成成分が複雑であるため、薬物の結晶状態評価を行うことは非常に困難であると予想されれるが、必要に応じて2年目の検討で適用した多変量解析技術(PLS回帰)を適用するなどすればそのような目標を達成したいと考えている。このような研究を通じて、TD-NMR法をPATツールとしても適用可能な新たな製剤物性評価技術に高めたい。
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Causes of Carryover |
実験の都合により、当初購入予定であった試薬を購入しなかったため、30,654円を次年度使用額にした。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] Time-domain NMR analysis to quantify water content in pharmaceutical ingredients and wet granules2021
Author(s)
Chiba, Y., Ohgi, K., Hayashi, Y., Kumada, S., Okada, K., Onuki, Y.
Organizer
6th Toyama- Basel Joint Symposium 2021
Int'l Joint Research