2023 Fiscal Year Annual Research Report
Physiological roles of serotonin as a biological reductant
Project/Area Number |
20K06989
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
三浦 隆史 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (30222318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ドパミン / セロトニン / コレシストキニン / 銅 / 酸化還元反応 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
ドパミンはセロトニンと同様に酸化されやすい物質であり、活性酸素種発生を促すラジカル類の発生原因となり得る。ドパミンの酸化はCu(II)により顕著に促進されるが、結果として生じるCu(I)も再酸化される際に活性酸素種発生の原因となる。従って酸化ストレスから脳を守るためには、ドパミンと銅の酸化還元を適切に制御することが極めて重要である。本研究課題では、ドパミンと脳内で共存することが知られるコレシストキニン(CCK8: アミノ酸配列DYMGWMDF)の銅結合物質としての性質に注目し、酸化還元制御物質としての役割を検討した。2023年度に実施した研究では以下の成果を得た。 CCK8はドパミンと銅の酸化還元反応に対する強い抑制作用を持つことがわかった。この抑制作用にはTyr2とMet3が必須であるが、Trp5よりC末端側の残基は不要であった。さらに、CCK8のN末端側半分の断片ペプチドCCKN4(DYMG)でもCCK8と同程度の酸化還元抑制能を持つことが明らかになり、Cu(II)との結合には、N末端アミノ基と脱プロトン化アミド基窒素に加えてMet3側鎖の硫黄原子が用いられていることもわかった。一方、CCK8のC末端側半分の領域は酸化還元の抑制に直接には関わらないが、脂質膜との結合に必要であることがわかった。ドパミンと共にニューロンから放出されたCCK8は、ドパミンと銅の不必要な酸化還元を抑制し、活性酸素種による毒性から特に細胞膜を保護する生理的役割を持つと予想される。 期間全体を通じて実施した研究により、脳内ペプチドであるエンドモルフィンやCCK8がCu(II)とCu(I)両者に親和性を持つ銅結合ペプチドであることが初めて明らかになり、この性質によりセロトニン、またはドパミンと銅の酸化還元に起因する酸化ストレスから脳を守る役割を持つ可能性が示された。
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