2020 Fiscal Year Research-status Report
Mesurement of nucleic acid medicine in biomaterials by enzymatic amplification methods
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20K06991
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
張替 直輝 日本大学, 薬学部, 教授 (90454743)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核酸医薬品 / 遺伝子増幅法 / リガーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸医薬品は、遺伝性疾患や癌など様々な治療に期待され、その技術はワクチンにも応用されている。核酸医薬品の血液濃度から体内動態を解析することは、それらの適正使用に必要不可欠である。本研究では核酸医薬品の検出に最適化した遺伝子増幅法を開発し、血中の核酸医薬品の定量を目指している。この検討では、遺伝子増幅法による核酸医薬品の検出法と生体試料中の核酸医薬品の抽出法を開発し、核酸医薬品を投与した動物の血中濃度を測定することを計画している。そのため、一年目は検出法について検討した。 核酸医薬品は20塩基程度の短鎖核酸のものが多いことから、隣接した核酸を結合させるリガーゼを利用した遺伝子増幅法であるLigase Chain Reaction(LCR)とLigase Detection Reaction (LDR)に着目した。しかし、リガーゼなどの酵素を用いた検出では、核酸医薬品に導入されているホスホロチオエート化(S化)DNAや2'-O-methoxyethyl化(2'-MOE化)RNAなどの人工核酸に酵素が作用するかが問題である。そこで本研究では、S化DNAと2'-MOE化・S化RNAに作用するリガーゼを探索し、それらに作用するものを見出した。そこで、そのリガーゼを用いたLCRによる S化DNAの核酸医薬品のFomivirsenの検出を試みた。その結果、検出はできるが、定量まではできなかった。次に、LDRによるFomivirsenと2'-MOE化・S化RNAの核酸医薬品のNusinersenの検出法を検討した。その結果、共に1~100 nMの濃度で定量的に検出することができた。 本研究により、遺伝子増幅法により核酸医薬品を検出できることを明らかにできた。今後は、このLDRの感度の改善と特異性の検証などを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初に核酸医薬品に導入されている人工核酸に作用するリガーゼを探索した。19塩基のNusinersenの配列のDNA、RNA、S化DNA、2'-MOE化・S化RNAを試料とし、その配列の相補鎖の約半分をそれぞれ5'末端と3'末端に持つ鋳型DNAと結合させ、2本鎖形成時にリガーゼ活性を示すとされるTaq DNA ligaseなどの8種類の酵素とそれぞれ反応させた。その反応液を希釈してその結合部位を検出する定量PCRを行ったところ、その内の6つの酵素はDNAとS化DNAの試料で、2つの酵素はDNA、RNA、S化DNAの試料で増幅を認めた。一方、RNAと2'-MOE化・S化RNA試料には1つの酵素で増幅を認めた。この増幅が認めた酵素を用いて、21塩基のS化DNAのFomivirsenに対するLCRとLDR、2'-MOE化・S化RNAのNusinersenに対するLDRを検討した。 LCRの検討では、LNAを挿入した10と11塩基のプローブでLCRを行い、その産物をゲル電気泳動で解析することで1.6 nMのFomivirsenを検出できた。しかし、このLCRの反応系にSYBR Green Ⅰを加えた定量LCRでは、定量的な検出はできなかった。 一方、LDRの検討では、核酸医薬品の配列の相補鎖の約半分をそれぞれ5'末端と3'末端に持つ鋳型の直鎖DNAをFomivirsenとリガーゼで環状にし、その結合部位を検出する定量PCRを行ったところ、1~100 nMの濃度で定量的に検出できた。また、Nusinersenでも、それに対応する鋳型の直鎖DNAをNusinersenとリガーゼで環状にして定量PCRを行ったところ、1~100 nMの濃度で定量的に検出できた。 本研究によりLDRを用いた核酸医薬品の定量法が開発できた。しかし、生体試料中の核酸医薬品の定量には感度の改善が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により遺伝子増幅法で核酸医薬品を検出できたが、感度の改善点と特異性の検証が必要であった。LDRにおいて、感度には鋳型DNAの濃度、特異性には鋳型DNAの配列が大きく関与すると考えられるため、それらについて次年度も引き続き検討を行う。 そして、開発した方法を生体試料中の核酸医薬品の定量に応用するためには、生体試料に含まれる妨害物質を除き、さらに核酸医薬品を濃縮する必要がある。本研究では生体試料として血漿や血清を想定しているが、血漿にはヘモグロビンなどのタンパク質に加え、EDTAやヘパリンなどの抗凝固剤も含まれ、それらはリガーゼやポリメラーゼの反応に影響を及ぼすと考えられる。更に、血漿や血清から核酸医薬品を回収する際に生体由来の大量のDNAやRNAも一緒に回収される可能性があり、そのことは遺伝子増幅法において非特異的な反応や検出感度の低下に繋がる。 そこで、次年度に行う生体試料中の核酸医薬品の抽出法の開発では、まず、短鎖核酸の精製に用いられるシリカ膜やイオン交換樹脂で血漿や血清中に含まれる妨害物質を除去し、核酸医薬品を回収する方法を検討する。次に、この方法では大量のDNAやRNAが含まれている可能性が高いため、それらを除去する方法を検討する。除去法として、上記の核酸医薬品の回収試料をDNaseやRNaseで処理することで分解する方法、ビーズなどに核酸医薬品と相補的な配列を持つ核酸を固定してハイブリダイゼーションで特異的に回収する方法を検討する。特にハイブリダイゼーションで回収する方法については、血漿や血清から直接、核酸医薬品を選択的に回収できるかについても検討する。 最終的には、核酸医薬品を添加した血漿や血清からの抽出試料に遺伝子増幅法を行い、濃度に依存した検出ができるかを検討する。その上で、その抽出法の回収率や操作性の向上についても検討する。
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Causes of Carryover |
今年度、新型コロナウイルス流行により緊急事態宣言が、4月上旬から5月下旬と1月上旬から3月上旬に発令され、それに伴い大学では研究室における卒業研究が原則禁止となった。また、緊急事態宣言が解除された期間であっても密にならないように研究室内の人数が制限され、当初予定していた研究協力者の学部学生の協力が半分程度しか得られなかった。そのため、本年度予定していた研究内容を一通り行って遺伝子増幅法で核酸医薬品を検出できることは明らかにできたが、開発した方法には感度などの改善点や特異性の検証などの課題が残っている。これらの検出法の最適化に関する詳細な検討が行えなかったため、本年度は元々研究室にあったリガーゼやポリメーラーなどの酵素のみで対応できた。また、今回は人工核酸に作用するリガーゼを探索するために合成した鋳型DNAを核酸医薬品の検出にも利用したが、本来は検出に最適化した鋳型DNAが必要である。 従って、今年度の未使用分の予算をFomivirsen とNusinersenの検出に用いるリガーゼとポリメラーゼなどの酵素の購入と検出に用いる鋳型DNAの合成に充て、次年度、これまで開発しきた核酸検出法の改良を行う。
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