2021 Fiscal Year Research-status Report
リポソームによる細胞接着装置に対する戦略的制御法の開発
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20K06992
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
伊納 義和 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (90434547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 義明 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (50334735)
古野 忠秀 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (80254308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リポソーム / 表面電荷 / 接着分子 / 接着シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、脂質二重膜からなる正電荷リポソームそのものが肥満細胞や筋管細胞、マクロファージの活性化時におけるサイトカイン分泌を抑制することを見出してきた。その要因としてリポソームが微小管の安定性を抑制し細胞内顆粒の細胞膜への移行を抑制することを明らかにしてきた。微小管は細胞接着装置において重要な役割を担っていることから、リポソームを戦略的に適用することで細胞接着装置を制御できることが期待できる。 昨年度は、エクストル―ジョン法を用いて均一な粒子径を有する数種類のリポソームや、脂質組成比を変化させ、表面電荷の異なる数種類のリポソームの作製に成功している。これらの物性の異なるリポソームを用いて細胞の活性化、特に肥満細胞の活性化に及ぼす影響を検討したところ、正電荷リポソームの表面電荷が肥満細胞の活性化抑制に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。 今年度は、まず正電荷リポソームが肥満細胞の接着分子インテグリンに及ぼす影響について検討した。はじめに、肥満細胞においてインテグリンの活性化の指標として、タリンの細胞膜への移行に着目した。その結果、正電荷リポソームは肥満細胞活性化に伴うのタリンの細胞膜への移行を阻害することがわかった。次に、正電荷リポソームがタリンの活性化に関与する低分子量Gタンパク質Rap1へ及ぼす影響を検討したところ、正電荷リポソームはRap1の活性化を抑制することが明らかになった。さらに、インテグリンのリガンドであるフィブロネクチンをコートして、肥満細胞の活性化に伴う脱顆粒量の測定を行った。その結果、正電荷リポソームはフィブロネクチンコートによる脱顆粒増強効果をキャンセルすることが明らかになった。以上の結果から、正電荷リポソームは、Rap1を介したタリンの細胞膜への移行を阻害することにより、肥満細胞のインテグリンを介した接着シグナルを抑制していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、配属学生の研究時間が大幅に減少し、それに伴い研究代表者、研究分担者の進捗状況に著しい遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、リポソームの表面電荷が細胞の活性化抑制に大きく影響を及ぼすこと、肥満細胞において正電荷リポソームが細胞接着分子であるインテグリンの活性化を抑制するという知見を得ている。今後は、リポソームがマクロファージ、神経細胞、膵島細胞の活性化に及ぼす影響、細胞接着分子、細胞骨格に及ぼす影響を明らかにすると同時に、各種細胞の活性化抑制に最も有効な表面電荷を有するリポソームを提案していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で実験計画に遅れが生じた。 今年度は、マクロファージ、神経細胞、膵島細胞の細胞接着分子、細胞骨格に正電荷リポソームが及ぼす影響について明らかにする。
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