2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K06997
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 洋太郎 東北大学, 薬学研究科, 講師 (90420041)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 修飾核酸 / 修飾ヌクレオシド / LC-MS/MS / プロファイリング / 安定同位体 / バイオマーカー / 肺がん / ROC曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、LC-MS/MSによる修飾核酸プロファイル法の確立と、本法を応用した新たな肺がん診断法の開発を目指している。 修飾核酸は、RNAの構成成分であるリボヌクレオシドにメチル化などの転写後修飾が加わったもので、150種類以上知られている。修飾核酸の発生は成長や生体の環境変化に伴うと予想されており、酸化ストレスや様々な疾患と修飾核酸についての報告がなされている。このことは、血中修飾核酸量の変動が生体の様子を反映している可能性を示す。また、RNA上で発現した修飾核酸は代謝によりモノヌクレオシド化されて血中へと放出されていく。つまり、生体中の修飾核酸量の把握、修飾核酸プロファイル解析が疾患および病態解明につながるものと考えられる。 前年度において、生体内の修飾核酸量の同時分析手法が本研究において必須と考え、我々が既に報告しているLC-MS/MSによる修飾核酸一斉分析法を改良し、19種の血漿中修飾核酸一斉定量法を確立した。 今年度は、開発した一斉定量法を肺がん患者血漿検体に適用した。測定した19種の修飾ヌクレオシドのうち、患者群と健常者群を区別できる肺がんバイオマーカー候補となりうるものを、変数増減法 (Stepwise procedure) によって選定した解析を行ったところ、1-Methyladenosine、N4-Acetylcytidine、N2,N2-Dimethylguanosine、N6-Methyladenosineの4つの修飾ヌクレオシドが選択された。 更に、ロジスティック回帰分析による肺がん診断法を検討した結果、既存のバイオマーカーと比べて遜色がなく、新たな診断法としての可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は修飾核酸の標品合成を終えて、次年度に分析法開発と臨床検体の分析を行う計画は予定通り進んでいる。 初年度および本年度で構築したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉定量法を肺がん患者血漿検体に適用し、健常群と疾患群との修飾核酸量を明らかにした。 続けて本解析によって肺がん診断法の検討として、選択された4つの修飾ヌクレオシドを用いてロジスティック回帰分析を行い、肺がん診断モデルの予測式を算出した。本研究で構築した肺がん診断モデルは、感度、特異度、精度、AUCすべてのパラメーターで既存のがんバイオマーカーと比べて遜色がなく、特にAUCに関して、0.9を上回る診断法はとても優れていると評価される。現在肺がんバイオマーカーとして報告されているCEA、SCAA 、bFGF、CYFRA 21-1、それぞれの判別能と比べても、本診断モデルが有用であることがいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の開発したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉定量法を用いて肺がん予測診断モデルの構築を行い、結果の妥当性も確認できた。今後の実験ではサンプルの年齢、性別、喫煙歴をそろえることで臨床適応可能なモデル構築を目指す。 次年度は本測定系を用いて肺疾患の鑑別に適用すべく、肺がん患者とCOPD患者における修飾核酸のバイオマーカー候補を評価する予定である。 生体中の修飾核酸量の把握、修飾核酸プロファイル解析が疾患および病態解明につながるものと考えられるため、本研究により構築した修飾核酸一斉定量法を用いることで、様々な疾患診断モデル構築が可能であることが示唆される。また、修飾核酸の生体内機能や疾患との関連の研究が多く進められている中、修飾核酸に特化した定量系は重要な研究ツールになると考えており、臨床および研究への応用が期待される。
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Causes of Carryover |
学会等の出張旅費の支出が無かったため、次年度使用額が生じた。 また当初計画していた実験が前倒しで終了したため次年度使用額が生じた。翌年度分としては物品費(分析実験の消耗品等)で使用する計画である。
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